井上ひさしの小説おすすめ15選｜代表作や最高傑作は？【一週間】

井上ひさしが亡くなり、教科書に載る小説家になってしまいました。井上ひさしの最大の特徴は読みやすい文体と笑いのあるストーリーにあり、ドラマや映画化もされています。当代の大河作家の三谷幸喜が畏れるほどです。

三谷幸喜が井上ひさしを追悼し「…いつも『この素材を井上さんならどう書かないか』を考えます。…同じ方向に行っても勝てるわけはないですから」と述べています。コメディのようで深かったり、シリアスなのに笑えたりするのは、井上ひさしの特徴だったからです。

三谷幸喜が尊敬していた井上作品の深みと重み。井上ひさしは深みと重みを「おかしみ」でつつんだ小説や戯曲を書きました。この文では、井上ひさしのこだわりやおすすめの本などをわかりやすくまとめています。代表作や最高傑作など気になる情報も必見です。

小説だけでなくさまざまな著作を残した物書きの井上ひさしですが、そのすごさは三谷幸喜以外の追悼文の一部からもよくわかります。

• 野田秀樹（戯曲家・演出家）　最も尊敬する一人で父のような存在。
• 別役実（戯曲家）　国民作家の名にふさわしい
• 栗山民也（演出家）　作品すべてが豊かな笑いとともに世界と人間に対する警告を発する書
• 五木寛之（作家）　同世代の作家に大きな刺激を与え続けてくる
• 山田洋次（映画監督）　何を聞いても正しく答えてくれる図書館みたいな人

井上ひさしは時代小説もまるで見てきたかのように細かく描写し、戯曲には緻密にト書きを書いています。頭の中で描いた景色や人物が、小説を通して読者の中で脳内再生されるように井上ひさしは書いたのです。

綿密な下調べのうえ、場面設定・人物設定・時間設定を丁寧に行って書かれた小説の個性的な人々は、どこか身近にいる存在のようにも感じられます。

井上ひさしが作文の際、「むつかしいことをやさしく、やさしいことをふかく…」と心がけていたエピソードは有名です。「一番大事なことは、自分にしか書けないことを誰にでもわかる文章で書く」という名言もあります。

「伝えること」「伝わること」を大事にしていた井上ひさしの小説や戯曲は、あまり本を読まない人にもおすすめです。　

井上ひさしは日本語に特にこだわりを見せ、日常の言葉を大切にしました。

• 役者に望むのはただ一つ。「一言一句間違わない」
• 劇作家として「日本語で生きることのしあわせ」を観客に伝えたい。
• 外国の文化を日本語としてしっかり受け止めながら、一方で、自分たちが普段使う日本語を磨いていく。

東北生まれながら「父と暮らせば」は日常使いの豊かな広島弁で書いています。日常語を大事にした井上ひさしの小説は生き生きと読み手に迫ります。

「井上ひさしの膨大な著作から代表作を一つ選べ」と問われれば、この『吉里吉里人（きりきりじん）』があがるでしょう。井上ひさしの命日も「吉里吉里忌」と呼ばれています。

東北の農村がある日突然独立をする物語ですが、国を作る政治・経済・農業・医学・言語の問題を近所の人が語るように描かれます。読みやすいのにあまりにも情報量が多く、気力の充実したときにしか読めないというファンが複数いるほどです。

井上ひさしの代表作ながら最初に手を出してはいけないとも言える小説です。

井上ひさしが小説という形で世に出した最初のタイトルがこの作品です。売れない小説家フンが書いた物語の主人公、大泥棒ブンが本から飛びでて大騒ぎの事件を起こす、奇想天外・抱腹絶倒のファンタジーコメディーです。

井上ひさしらしい言葉遊びやリズム、ハチャメチャな展開で小学生でも楽しく読めるように書かれています。逆に、大人になって読むとあらゆる権威や常識と対峙した風刺文学でもあると感じられるので、家族でも繰り返し読める小説です。

井上ひさしと切り離せないのが「日本語」への価値観です。『東京セブンローズ』は戦中・戦後を丁寧に描きつつ、井上ひさしの日本語へのこだわりが溢れた長編小説になっています。

旧字体や旧仮名遣いは戦中まで通常に使われていました。主人公が綴る庶民の暮らしも旧文体の日記形式で書かれ、読者をその時代へと引き込みます。物語の後半に起こるのは日本語ローマ字化計画です。1970年代にも現実に日本で問題となっていたテーマが描写されています。笑いつつも日本語とは何かについて考えさせられる小説です。

井上ひさしの名言「むつかしいことをやさしく、やさしいことを深く…」が如実に表れた小説です。小学生でも読めますが、家族の在り方が描かれているのでどの年代の人が読んでも心に沁みます。

母を亡くした姉弟が夏休みの間、祖母に預けられて成長していくストーリーです。父は亡き妻と「一日一話を作って家族に届ける」という約束を交わしました。小説の中に物語が現れるような構成になっており、心温まる文に和田誠のほのぼのとした挿絵が寄り添う作品です。

『一週間』は2010年に新潮社から発表され、のちに文庫化もされた作品です。井上ひさしの遺作にして最高傑作と言われています。終戦後に捕虜となった男が一人戦いを続ける物語。歴史的価値も高く、初心者の方から愛読者まで多くの方におすすめです。

『握手』は1987年に講談社から発表された短編集『ナイン』に収録されている作品です。のちに文庫化もされているため、今でも手軽に読めます。主人公とルロイ修道士の交流を描いた『握手』は、自伝的作品とも言われています。

中学生の教科書にも掲載されているため、ご存知の方も多いでしょう。短編なので、短時間で読めるのも魅力です。

井上ひさしは「演劇には軽々と国境を超える力がある」と語っています。それは人間の動きやしぐさで思いを瞬時に共有できるからです。対して小説で自分が描くシーンを正確に伝えるには、細かく細かく描写しないと同じように伝わらないと述べています。

井上ひさしの作品は、世界中で上演され絶賛されています。日本でも劇場を笑い泣きの渦に陥れることもしばしばあります。井上ひさし脚本の舞台や映画を見てから小説や戯曲を読むのもおすすめです。

井上ひさしが世に出た際の作品が「ひょっこりひょうたん島」で、メインテーマは「泣くのは嫌だ、笑っちゃお！」でした。井上ひさしが扱うテーマは重いのに軽く読み進められる点が特徴です。井上ひさしの作品の特徴やおすすめ商品について解説しました。同じように、泣き笑いできるような小説が好みの方はこちらの記事もあわせてご覧ください。