鷺沢萠の小説おすすめ15選｜韓国が舞台の作品や名言も

鷺沢萠さんは、1968年4人姉妹の末っ子として東京都大田区に生まれました。鷺沢萠さんは若くして華々しく文壇デビューし、将来を嘱望されていました。しかし、鷺沢萠さんは2004年に35歳の若さでこの世を去っています。死因は自殺と発表されています。

今では鷺沢萠さんの存在を知らない若い世代もいるわけですが、実は鷺沢萠さんのエッセイが高校の国語の教科書に掲載されています。それがきっかけで彼女の小説に興味を持つ人も少なくありません。でも、いざとなるとどれから読めばいいのか迷い、本選びに悩みませんか？

そこでこの記事では、鷺沢萠さんの小説の魅力を解説し、鷺沢小説の選び方・初めて読む人におすすめの作品などをご紹介いたします。小説とは違った雰囲気のエッセイについても触れますので、ぜひ最後までお読みください。

鷺沢萠さんは作家になってから自分の祖母が韓国人である事実を知ります。それ以降、韓国には特別な思いを抱き続けていました。そして自分がクォーターである『事情』について深く考えるようになるのです。

他人には理解できない『事情』に向き合う方が、どうせ他人にはわかってもらえない『事情』なのだと思うよりも好きだとエッセイに書き残しています。そのエッセイに韓国で出会った鷺沢萠さんが名言だと思った言葉が書かれています。

「あたしらはな、日本人ちゃうねん。でも韓国人ともちゃうねん。だからつまり、僑胞やねん」

ごく当たり前の内容に思えますが、それを名言だと捉えるのも、また鷺沢萠さんの『事情』なのです。

自分探しをテーマにした小説です。在日問題が出てくるあたり、やはり鷺沢萠さん自身の出生が大いに影響されていると思われる作品です。知りたかった自分の出生の秘密と知った後の脱力感が見事に描かれていて、重いテーマなのに清々しさが残る作品です。

鷺沢萠さんが20歳の頃に書かれた作品で、作家として早熟していたとわかります。『果実の舟を川に流して』も収録されています。

デビュー2作目に出版された短編集です。鷺沢萠さんの小説は家族をテーマにしたものが多いのですが、この作品も然りです。風景描写が秀逸で、文章を読みながら目の前に鷺沢萠さんの描く世界が広がるような感覚に陥る小説です。

表題の芥川賞候補となった『帰れぬ人々』の他に4作品が収録されおり、どれも読んだ方に満足感を与えてくれます。

在日韓国人が韓国に留学する物語です。あまりにも鷺沢萠さんの生い立ちと酷似しています。日本人でもない、韓国人でもない自分にふわふわとした居心地の悪さを感じるところも見事に描かれています。在日の人・韓国通の人が読んでもうなづける内容です。

併録されている『ほんとうの夏』も同じく在日韓国人の話です。どちらも秀作で、ぜひ読んでいただきたい作品です。

『春の居場所』は鷺沢萠さんの遺作となった作品です。最後の1行が書ききれず未完成のまま『ビューティフルネーム』に収録されています。映画化するにあたり創作部分が追加され、完成しています。

亡くなってから見つかった作品ですので、出版も映画化も鷺沢萠さんの本意であったかどうかはわかりません。しかし、間違いなく素晴らしい作品ですので、ぜひお読みください。

タイトルの『F』とは、落第点のFを意味しています。人生の落第点を抱えてなかなか前向きになれなかったり、うまくいかない人生を嘆いたりしている人に捧げるような小説です。しかし、読み終わったときには温かな気持ちになれる鷺沢萠さんならではの作品です。映画では『F』のタイトルで制作されています。

鷺沢萠さんはたくさんのエッセイも残しています。エッセイでは、素顔の鷺沢萠さんが垣間見られます。小説とは違う素直な鷺沢萠さん自身の言葉が綴られており、サラッと読めて笑えます。また、仲のよい作家さんとの交流も書かれており、意外な関係性が見られます。

特に群ようこさんは、鷺沢萠さんが「私の姉に似ている」と言ったのがきっかけでお姉ちゃんと呼ぶほど仲よしになっています。群ようこさんは『野生時代』に鷺沢萠さんに対する追悼文を寄せています。

鷺沢萠さんは小説家として活躍するかたわら、翻訳家としても活動していました。イタリア語・韓国語への翻訳も行っており、語学力の高さがうかがえます。絵本の翻訳がメインで、可愛らしい絵本の物語にどのような言葉を選んで翻訳しているかが注目ポイントです。小説家・鷺沢萠とは違った世界観をお楽しみください。

　『川べりの道』は文學賞新人賞を受賞した鷺沢萠さんのデビュー作です。しかし、この作品には盗作疑惑がかけられていて、今もその真相は定かではないのです。盗作されたとされる吉田秋生さんがあまり問題視されなかったため穏便に収束しました。

将来有望とされていた鷺沢萠さんはこの盗作疑惑についてのコメントは残していません。しかし、デビュー作から盗作疑惑がかけられてしまったことはとても残念なことです。

鷺沢萠さんの作品では家族のあり方、人とのつながりに悩む若者がよく描かれています。ピュアで切なくて綺麗な世界が広がるのは鷺沢萠さんの作品の特徴です。それは鷺沢萠さんが今の時代を生きる若者に残したメッセージかもしれません。あなたも鷺沢萠さんのピュアな世界観に触れてみませんか？