高田郁のおすすめ小説18選｜『あきない世傳金と銀』やドラマ化キャスト・映画化も

高田郁は、ドラマや映画になった『みをつくし料理帖』、現在も継続中の『あきない世傳 金と銀』など、話題の小説を世に送り出しています。江戸時代を舞台にした時代小説が多いのが特徴で、魅力は何といっても主人公のひたむきさです。※『商いせいでん金と銀』ではなく「あきない」はひらがな表記です。

現代のように自由な時代とは違う環境の中で難題が降りかかっても、自らの力で乗り越えていく主人公のしなやかな姿に引き付けられます。温かく接する周囲の人々とのやり取りも必見です。また、時代小説以外に現代の家族を描いた短編小説もあります。高田郁の小説は生きる勇気が芽生え、人の暖かみにぐっとくるのが魅力です。

今回はそんな高田郁の小説について、病気を機に小説家に転身したなどの経歴や選び方などを解説します。さらに、おすすめ作品15選や、ドラマ化・映画化された作品やキャストについても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

高田郁は兵庫県宝塚市生まれ。判事を目指し中央大学法学部に入学しています。卒業後は学習塾の勤務を経て1993年、川富士立夏のペンネームで漫画原作者デビューしました。転機は子供のころから親しんできた山本周五郎作品の『なんの花か薫る』を読み直した40代半ばです。

改めて大きな刺激を受け、数年後に罹った目の病気を機に「後悔したくない」との思いで、時代小説への転身を決意しました。2008年には時代小説家としてデビューしています。

また、高田郁の顔が知りたくて写真を探す方がいますが、顔出しは一切していません。しかし、サイン会は行っているので足を運んでみるのをおすすめします。

以前の売れる時代小説といえば、江戸を舞台としたもの・捕り物・剣豪ものが主流でした。しかし、高田郁にとってはどれもが苦手とする条件でした。捕り物や剣豪ものはどうしても男性目線になりがちですが、高田郁作品のほとんどは女性が主人公です。人物の名前は設定場所から地名やまつわる由来を基に付けられています。

高田郁作品は、本を読み進めていると目の前に登場人物や景色が現れてきます。ベストセラーになった『みをつくし料理帖』では人物の絵や店の間取りをスケッチブックに実際に描いて設定しています。体格から好きな食べ物までを書き込んでのイメージ作りは、元漫画原作者ならではのアイデアで、物語が頭へとスムーズに入ってきます。

高田郁の小説の多くでは、江戸時代の庶民の暮らしぶりが詳しく描かれています。特に、商売の仕組みやそこで働く人々の考え方が丁寧に表現されています。

• 江戸と大阪の生活の違いが知りたい
• 美味しいものが大好き
• 着物に興味がある
• 最近上手くいかないと感じている

こんな方にはぜひ手に取っていただきたいです。地域による暮らし向きの違いがわかり、新しい料理や着物が生み出される瞬間に立ち会えます。また、いつも困難を乗り越える主人公にいつの間にか励まされているような気持ちになります。

これから初めて高田郁の小説を手に取る方に向けて、選びやすいように4つの観点から作品を分類しました。代表作品・ジャンル・舞台となった時代・発売日順で分けたので興味のある本をより見つけやすくなっています。

『出世花』は2007年に第2回小説NON短編時代小説賞奨励賞を受賞したデビュー作です。文芸評論家の細谷正充氏により絶賛されました。2巻構成で、1巻目は主人公が9～19歳の頃が、2巻目では22歳以降についてが描かれています。

父を失った主人公の少女「お艶」は「お縁」に名を変え、死者の弔い専門の墓寺で死者の体を洗い清める湯灌の仕事につきます。優しく死者に向き合うお縁の成長していく姿に心打たれる、漫画にもなった作品です。

『みをつくし料理帖』は全10巻からなるベストセラーになった話題作です。映画化・ドラマ化・漫画化もされています。ドラマでは主人公の澪役を黒木華さん、小松原役を森山未來さんと豪華なキャストで放映されました。大阪生まれの澪が江戸の地で上方との食文化の違いに悩みながらも、試行錯誤しながら料理人として成長していきます。

お話に登場する美味しそうなお料理の数々もこの物語のポイントです。調べた上方と江戸の違いを基に、すべで高田郁によって試作が重ねられました。それをまとめたのが『みをつくし献立帖』です。別に4年後の澪を描いた『花だより みをつくし料理帖 特別巻』があります。

『銀二貫』は2013年の第1回Osaka Book One Projectに輝いた受賞作品です。大阪満天の寒天問屋の主の和助は天満宮再建のための銀二貫で、仇討ちにより父を亡くした鶴之輔を救います。

生きるため名を松吉と変えて商人の世界に飛び込む鶴之輔は、厳しい生活と修行の日々が続く中、人情に触れながら成長していきます。初めて高田郁の作品に触れる方でも読みやすい一冊で完結する話です。ドラマ化や宝塚歌劇団による舞台化もされています。

電車やバスに乗っている短い時間でも楽しめるのが『ふるさと銀河線』です。今までは江戸時代の物語でしたが、こちらは現代の家族の姿が9編の短編小説になっています。

演劇の才能を買われた少女のふるさとへの愛と夢との狭間で揺れる心や、リストラされたのに家族に言えない男性などが描かれています。抱えた苦難の中でも、真の生き方を追う姿が印象的です。織り交ぜられる美しい風景がより心に染みわたります。

『あきない世傳 金と銀』は高田郁の世界をじっくりと味わいたい方に向いています。着物が好きな方にもぴったりで、12巻までがすでに発売済みで、現在も継続中のお話です。13巻の新刊は2022年8月9日発売予定となっています。

江戸時代の大阪が物語の舞台で、学者の子に生まれた幸は父の死を機に大阪の呉服屋「五鈴屋」へ奉公に出ます。商いと関係のない女衆がご寮さんになり、女性経営者として手腕を発揮するストーリーです。次々と起こる難題に知恵と工夫で乗り越える姿に勇気をもらいます。

時代小説といえば、武士や剣豪のチャンバラをイメージしがちです。しかし、市井小説の主人公となるのは職人・商人などの庶民です。その時代に暮らす人々の人情や料理など、生活の様子が描かれています。

当時の暮らしや恋愛事情などがわかり、感情移入しやすいのが特徴です。高田郁の作品には市井小説が豊富で人気シリーズもあるため、初めて読む方におすすめします。

作品を好きになると、作者がどんな人物か興味が出てくるもの。そんな方にはエッセイ集がおすすめです。作者の生き方や考え方を知ると、ただ小説を読むだけよりも、さらに深く作品を楽しめます。

高田郁のエッセイ『晴れときどき涙雨 高田郁のできるまで』は、漫画原作者時代に執筆していた4年半分のエッセイと、書き下ろしが収録されています。家族のおはなしや病気や事故などの体験談もあり、作家の原点に迫れる一冊です。

代表作の1つ『みをつくし料理帖』には、おいしそうな料理が次々と登場します。その料理の作り方を紹介するレシピ本が『みをつくし献立帖』です。江戸時代の食事を家庭で再現できます。

レシピは写真付きで紹介されているのでわかりやすいです。本編で紹介していないレシピ・主人公の家の間取り図・書き下ろしエッセイなども収録されているので、作品の世界にどっぷりはまれます。

まずは、長期に渡る江戸時代のどのあたりを舞台にしているのかを分類しました。江戸中期のお話は『あきない世傳 金と銀』『銀二貫』です。『あきない世傳 金と銀』は8代将軍徳川吉宗の頃、『銀二貫』は松平定信などによる政治が行われていました。

江戸後期の作品は『みをつくし料理帖』『出世花』で、11代将軍徳川家斉の世にあたります。幕末から明治時代を描いた小説は『あい 永遠にあり』です。実在の医師、関寛斎の妻の物語で夫を支え抜く激動の生涯を描いています。現代を扱ったのは『ふるさと銀河線』です。

高田郁の主要な小説を発売順に並べてみました。出版された順に読めば、また一味違った魅力が発見できるはずです。シリーズものを読破すれば、庶民の暮らしぶりを熟知でき、主人公の真摯な姿に明日への活力が湧いてきます。

『あきない世傳 金と銀』はNHKBS時代劇にて 2023年12月8日金曜日からドラマ化され、放映されました。『みをつくし料理帖』などヒット作が多くある髙田郁さんの『あきない世傳 金と銀』が原作で、脚本は『ゲゲゲの女房』『八重の桜』を手掛けた山本むつみさんです。

主人公である幸に関してさまざまなキャスト予想がされましたが、抜擢されたのは小芝風花さんでした。気になる相関図は五鈴屋の3人の徳兵衛は、渡辺大・加藤シゲアキ・松本怜生が演じます。五鈴屋番頭には舘ひろし・二代目の徳兵衛の妻富久は高島礼子です。

そのほか、八嶋智人・辻本祐樹・いしのようこなど豪華キャストも出演しています。商いを通じて一人の主人公が成長していく姿が描かれ、恋愛・人情など笑いあり、涙ありの人情時代劇に仕上がっています。

高田郁の最新刊は2023年8月25日に発売された『契り橋 あきない世傳 金と銀 特別巻(上)』です。あきないシリーズに登場した人々を4人を主人公にしたスピンオフの物語です。4つの短編集が収められ、五鈴屋を出奔した惣次が井筒屋三代目保晴になるまでの話などが描かれています。

2024年2月29日には『幾世の鈴 あきない世傳 金と銀 特別巻(下)』が発売予定です。上巻をすでに読んだ方からは面白かったとの声が届いており、下巻を待ち望んでいる方も多いです。

高田郁賞とは、2017年に大手書店の三省堂書店が創設した賞です。時代小説の初心者向けの「おすすめの1冊」を髙田郁が選出します。栄えある初受賞に輝いたのは、坂井希久子の『ほかほか蕗ご飯』です。

この作品は高田郁が選出したこともあり、高田郁ファンにも相通じる魅力があるといえます。ぜひ、坂井希久子作品も手に取ってみてください。

高田郁の作品では、短編集・1巻完結・シリーズものなど、さまざまなストーリーの長さで選べるのも魅力の一つです。独自の目線で紡ぎ出される物語は感情移入がしやすく、涙してしまいます。この機会に作品を手に取ってほっこりした気持ちになりましょう。以下もあわせてご覧ください。