西村賢太のおすすめ小説8選|芥川賞受賞の代表作や破天荒なエピソードまで詳しく紹介

芥川賞受賞作家である西村賢太をご存知の人は多いと思います。受賞会見の際に「そろそろ風俗に行こうと思っていた」という発言で話題となり、その歯に衣着せぬ物言いから一時期はテレビやラジオなどのメディアにも出演して世間に知られるようになりました。

2022年3月に突然タクシーの中で意識を失い帰らぬ人となってしまった西村賢太ですが、これまでにたくさんの小説を残しています。その作風は私小説であり、主人公は作家の分身とも言える存在で西村賢太が歩んできた人生を知ることができます。

今回は、最後の私小説家と呼ばれた西村賢太の代表作やおすすめの作品・随筆や対話集なども紹介していきます。昭和の文豪のような豪快な人生の物語とその美しい文章の作品たちをぜひ楽しんでください。

東京都江戸川区の運送業を営む家庭に生まれますが、あまり裕福とは言えない状況でした。そして中学は不登校になり、高校も進学しておらず、16歳で家を出てさまざまなアルバイトをして生活をするようになります。

自身の作品に大きな影響を及ぼすような私小説家の作品を読み漁りながら、本格的に作品を書き始めたのは30代のころでした。

芥川賞受賞会見の際には「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」という発言が話題となりましたが、彼の破天荒なエピソードは多く知られています。

住んでいるアパートには家賃滞納を繰り返しており、一緒に暮らしていた女性へのバイオレンス・さらには酒に酔って同僚や警官を殴るといった事件を何度も起こしていました。

西村賢太の作品のスタイルは、自身を主人公にしてその半生を描く私小説です。すべて作者自身である北町貫多が主人公であり、10代から40代までのさまざまな年代のエピソードが少しずつ語られていきます。

主人公の荒れていて落ちぶれた生活が自虐的に書かれています。文体は純文学らしく難しい言い回しも出てきますが、テンポよく読み進めることができます。

「苦役列車」は言わずと知れた名作であり、西村賢太の代表作でもあります。この作品は主人公北町貫太が19歳のころのストーリーです。短気で酒浸りであまりいいところが見当たりませんが、なぜか人間的な魅力があり惹きつけられます。

西村貫太の作品が初めての人は、まずこの作品を読んで西村賢太の世界観に触れてみましょう。

単行本としては2作目で、デビューから間もなく執筆された「けがれなき酒のへど」と「暗渠の宿」という短編が収録されています。

風俗嬢にお金を騙し取られてしまったり、彼女に対する自己中心的な振る舞いなど、男女のエピソードも多く書かれています。最低男だと思いながら、なぜか共感できたり情が湧いてきたりしてハマってしまいます。

芥川賞の候補になった作品で、主人公の北町貫太と同居している秋恵という女性との話が主です。いくらなんでも酷すぎないか？と思うクズ男ですが、それでも離れていかない秋恵との関係は狂気的とも言えます。

女性におすすめするのは少しためらうような部分もありますが、作者のファンになった方は必ず手に取るべき作品です。

「苦役列車」に続く時系列のエピソードとなっています。筆者初めての長編小説ですが、中だるみすることなく読み進めることができます。長編になっても一気に読んでしまうほどの文章の美しさと引き込まれるストーリーが素晴らしいです。

芥川賞受賞後の文体のほうがそれ以前よりもマイルドになっていて読みやすい印象ですので、初期作品が難しいと感じた人はこの作品がおすすめです。

さまざまな雑誌や新聞・展覧会のパネルに書かれた解説文などがまとめられた随筆集です。西村が没後弟子を自称している作家藤澤淸造をはじめとした小説家の作品の考察や思いが多く書かれています。

さらに日記や日常生活で考えていることなども知ることができ、より作家自身の人間性や魅力を知ることができます。西村ファンにはたまらない1冊です。

さまざまなメディアで西村賢太が対談した模様がまとめられた一冊です。本音で裏話や思いが語られており西村賢太ファンはさらにファンになること間違いなしの、おもしろい作品になっています。

石原慎太郎・高田文夫との対談のやりとりはとても軽快でクスッと笑ってしまうような話も出てきます。私小説を読んでみてさらに作者のことが知りたくなったら読んでみましょう。

私小説を描き続けてきた作家西村賢太は、2022年2月に急逝しました。その5月に出版されて遺作となったこの作品には、作者が文芸誌に小説を投稿し始めたころのエピソードが描かれています。

この作品が最後になってしまった北町貫太の物語でしたが、小説を書き始めてすぐに芥川賞の候補になって拍子抜けしたことなどが記されています。芥川賞受賞までのストーリーが見れないことが惜しまれます。

この記事では私小説家西村賢太の経歴や作品の魅力・おすすめ小説を解説しました。芥川賞を受賞した苦役列車はもちろん、そのほかの作品を読み進めることで、作家自身である北町貫太の魅力にどんどんハマっていくはずです。ぜひ参考にして西村賢太の作品を手にとってみましょう。以下の記事もあわせてご覧ください。