五木寛之の小説おすすめ15選！ベストセラー作家の代表作から最新作までご紹介

作家・五木寛之は1967年、その時代に生きる青年たちの虚無や不安を描いた「蒼(あお)ざめた馬を見よ」で直木賞を受賞し、その大胆な構成とスピード感のある明快な文体が一躍評判となり、代表作にもなりました。

その後も大河小説「青春の門」など多くの作品が、単行本や文庫本として多数出版されベストセラー作家となっていきました。また小説だけにとどまらず、エッセイや評論、対談集や翻訳でも活躍し、さらに音楽界でも70を越える作詞活動が評価され「日本レコード大賞・功労賞」を受賞しました。またテレビやラジオなどメディア界にも多く出演し、「百寺巡礼」などの番組で親しみのある進行役が多くの人の共感を呼びました。

当記事では、五木寛之の生い立ちや受賞歴・映画化された小説・小説家以外の顔などに加え、おすすめの小説作品などをご紹介して、改めてその多才な魅力に迫りたいと思います。

作家・五木寛之は、1932年福岡県八女市にて教員の両親の元に生を受けました。1952年に早稲田大学第一文学部露文科に入学し、ロシア文学の教授の薫陶を受け、ゴーリキーなどロシア文学を読み漁り、後にロシアを舞台とした多くの作品のベースとなりました。

学生時代は苦学生であり、いろいろな職種のアルバイトを経験されたようです。社会に出てからは、文筆活動の他に、放送番組の構成や創作ミュージカル・70近くの作詞など、マルチな分野で活躍しています。

1966年には音楽ディレクター・馬淵玄三をモデルにした小説「艶歌」を発表し、音楽ジャンルに「演歌」の確立に大きくかかわりました。また各界人との対談や、百寺巡礼などのテレビ出演も多く、「かもめのジョナサン」などの翻訳や多数の賞の選考委員なども務めています。

作家・五木寛之は、これまでにモスクワの若者ミュージシャンとの交流を描いた「さらばモスクワ愚連隊」で、小説現代新人賞を受賞したのを皮切りに、翌年「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞を受賞しました。

さらに代表作ともいわれる「青春の門」が吉川英治文学賞、その他にも仏教関連やメディアでの活動、多くの作詞活動が認められ「日本レコード大賞・功労賞」を受賞するなど、文学だけにとどまらずいろいろな分野の賞を受賞し、その多才ぶりがうかがえます。下記に受賞歴を表にまとめました。

ここでは、これまでに執筆された小説の中から、映画やテレビドラマ化された代表的な作品を、あらすじを交えてご紹介します。

音楽プロモーターでジャズピアニストの主人公が、冷戦時代のソ連にジャズ・バンドを送り込む仕事を依頼されてモスクワを訪れます。そこで、トランペッターの不良少年と親しくなり場末のバーでピアノ演奏をしたり、美しいロシア娘に出会います。そして、ジャズに熱狂するソ連の若者たちの姿やジャズに理解のないソ連の外交官たちを目の当たりにしますが・・・

1968年、五木寛之のデビュー作で「小説現代新人賞」受賞の同名小説が加山雄三や野際陽子・神山繁らの出演で映画化されました。そしてロシア娘役で本作のみ出演のハーフ・森田敏子の美しさが当時話題となりました。

昭和の太平洋戦争中に、九州・筑豊に一人の少年が生れます。父親はかつて働いていた炭鉱の事故で早逝し、義母により育てられています。やがて終戦となり、義母は病に倒れてしまいますが、少年は周りの人々とのふれあいやいろいろな出来事を経験し、波乱に満ちた人生を歩み始めていきます。

1969年から1994年まで「週刊現代」に断続的に連載された大河小説で、筑豊篇や自立篇、風雲篇まで全8編からなる「吉川英治文学賞」受賞作品です。そしてシリーズ累計で2000万部を超える大ベストセラーとなりました。1975年に仲代達矢・吉永小百合などの出演で映画化され、他にもテレビドラマ化や漫画化もされました。

かつて美術学者を志した青年が、博多のバーで、すべての作品が失われてしまったとされる南米ヌエバグラナダの画家・パブロ・ロペスの絵「少女の像」を見つけます。青年はかつての恩師を訪ね見つけた絵の話をしますが数日後、秋沢はひとり娘を残して不可解な自殺をとげます・・・

1988年に、五木寛之の同名ベストセラー小説が映画化され、占領下のパリからナチスによって日本へ持ち運ばれたとされる絵の背後にある秘密を追う青年たちを描いています。青年役を伊藤孝雄、ほかに樋口可南子・鶴田浩二などが出演しています。

ジャズ・ミュージシャンをめざす二十歳の主人公が、横浜港からシベリアへ渡り、そこからソ連・モスクワや東欧などの旅をしながら、ジャズや酒・ドラッグ・セックスそして暴力にいろどられた放浪の旅を続けますが・・・

青春とは？音楽とは？世界とは？人間とは？走り続ける60年代の若者たちを描いて、当時圧倒的な共感をよんだ作品。そして、1999年に安藤政信主演で映画化され、彼のスクリーンの中の自然な演技も若者たちに支持され評判となりました。

横浜にある精神科病院は、院長の良心的な経営により建物は老朽化し、医師も薄給のためなり手がない状態でした。そこへ、派手な外車に乗った青年医が赴任して来ます。そして、全治しているのに退院しようとしない影のある女性患者にひかれていきますが・・・

五木寛之の同名作品を原作として、1976年に中村雅俊や五十嵐淳子・岡田茉莉子・石原裕次郎などが出演して映画化されました。石原裕次郎が中村雅俊の兄役として出演し、彼の実写映画の遺作となりました。

パリで政治活動により身を潜めている男と、学生時代に恋仲になっていた女性が偶然に出会います。現在、女性は裕福な貿易商と結婚し不自由のない生活をしています。二人は南仏へ旅に出て、ひとときの情事に浸ろうとしますが・・・

1976年に、麻生れい子・松橋登の出演で映画化されました。撮影は当時脚光を浴びていたカメラマン・浅井慎平が担当し、監督はモダン派として注目された中平康でしたが、この映画完成後に52才で亡くなり、この作品が遺作となりました。

老画商の愛人になっていた女性が、京都祇園祭・宵山の雑踏の中で若い商社マンと出会い、山鉾の装飾に使われているペルシャ絨毯の美しさを教えられます。やがて老画商はガンに侵され死期を迎え、女性にペルシャ絨毯とそれを生んだイランへの航空券を残します。そして女性は画商の遺志でイランに旅立つのでした・・・

1978年に、百貨店の三越が大金を出して企画・制作した映画として話題となりました。真野響子や北大路欣也・小川真由美・佐分利信らが出演し、作詞・五木寛之、作曲・武満徹、ハイファイ・セットが歌った主題歌「燃える秋」が大ヒットとなりました。

ロシア旅行で知り合ったガイドのロシア青年が吹くトランペットの音色に惹かれた女性が、オーケストラのオーディションを受けに来日した彼と偶然再会し、彼を応援します。そんな女性の周りでは、父が病で倒れたり、共同経営者の女性が自殺したり、ロシア青年の身にも事件が起こります・・・

五木寛之のエッセイ「大河の一滴」をベースに、作者自らが原案を書いて映画化されました。出演は安田成美や渡部篤郎・三國連太郎などで、古都・金沢やロシアを舞台に壮大なスケールで描き出された映画です。

堅実な速記者として働いている女性が、母と妹と3人暮らしの生計を立てていました。ある日、妹が銀座の画廊に飾られていた亡父の作品をナイフで引き裂いてしまった事件が起きます。これにより森下家は500万円相当の弁済を強いられてしまいますが・・・

1979年にテレビドラマ化され、全13回で放送されました。主演の松坂慶子がバニーガールの衣装で登場し、五木寛之が作詞した主題歌「愛の水中花」を自ら歌い、女優として、また歌手としても最もブレイクした作品と言われました。

両親を早くに亡くした19才の青年が、パチンコに明け暮れる日々を送っていました。青年にはスナックを営む姉がいて、この店には姉の高校時代の妻子持ちの教師が来て、二人は仲よくなっていきます。ある日、姉の代役で教師と信州へドライブに行き、途中の碓氷峠では「ダブル・クラッチ」などの運転テクニックを教わります。その後、姉は身籠り、教師とドライブに行き重態に陥り、それを聞いた青年は激怒し、逆襲を考えますが・・・

原作は五木寛之の同名の短編小説で、1978年に映画化されました。青年役を郷ひろみが演じ、姉役は松坂慶子、教師役は地井武男、ほかに青年の恋人役に森下愛子が演じました。

作家・五木寛之はこれまでに数多くの小説を執筆してきましたが、その他にも100を超える随筆・評論を発表し、また共著や対談集も多く、翻訳や作詞の分野でも活躍しました。さらにテレビ番組の進行役などメディアにもたくさん出演し、その多才ぶりがうかがえます。

随筆や評論の分野として、1968年に執筆を開始した「風に吹かれて」は、当時の若者のいろいろな視点で世界が捉えられていて評判となり、多くの出版社から文庫本として出版されました。その後も引き続き、評論や共著・対談集・翻訳・作詞などさまざまな分野で活躍し、2022年までに100を超す随筆が執筆されました。

作者が年齢を重ねるにつれて「百歳人生を生きるヒント」とか「無意味な人生など、ひとつもない」など、老いを意識した人生を考える内容も多くなってきました。最近、2022年に発表した「一期一会の人びと」は、作者がこれまでに出会った各界の19人の人々との出会いと色褪せぬ思い出が綴られていて印象深いです。

メディア関連の出演も多く、テレビでは「NHK　エルミタージュ　華麗なる美の殿堂」や「五木寛之のわが心のロシア」・「モスクワは忘れない ～吟遊詩人・ヴィソツキーの歌」など、ロシア通で知られる氏ならではの番組に携わりました。

また「五木寛之の百寺巡礼」や「新金沢小景」・「21世紀 仏教への旅」・「五木寛之 風のCafe」など、日本の名所を案内する進行役として、親しみのある語り口が評判となりました。さらにラジオ出演では深夜番組が多く、「わが人生の歌語り」や「聴き語り・昭和の名曲」など作詞家として歌謡界での話もテーマとなりました。

作家・五木寛之は2022年に90歳になりますが、今でも精力的に執筆活動を続けています。最新刊としては2022年3月に「折れない言葉」が発売されました。この本には著者がこれまで接してきた古典や諺・知人の言葉などから、自身が支えられてきた不思議な力がある言葉がちりばめられています。

また2月に刊行された「背進の思想」は、タイトルが「背進」となっていますが、前向きな文章に元気づけられると評判になっています。常に新鮮な考えをもつ作者には、これからも人生の指針となる本を書き続けて欲しいですね。

五木寛之は小説執筆の他にも、随筆や作詞、テレビやラジオのメディア出演など、いろいろな場で活躍し、その多才な面がうかがえますね。今後さらに執筆が続けられる作品に触れて五木寛之ワールドの魅力に浸りましょう。ぜひ下記の記事も参考にしてみてください！