古井由吉の小説おすすめ11選!芥川賞受賞の『杳子』など代表作を紹介|口コミ付き
この記事では内向の世代の代表的作家・古井由吉の小説についてお伝えします。古井由吉の人物像や難しい文体などについて解説するとともに、芥川賞作品『杳子』などのおすすめ小説を紹介しますので、本選びの参考にしてください。家族に託していた遺稿や全集などの情報もお教えします。
2023/08/10 更新
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杳子は誰の視点に寄り添って読むかという点が重要になると思った。 自らに引き寄せてしまい共感して読んでしまう読み手では入り込み過ぎてしまうかもしれない。 杳子は姉を真似ていて、男をやまいの世界へ引き摺り込む事を自己演出している。 昨今は、メンタルヘルスの知識がそこここに溢れているので、見分けがつきやすいが、 70年代のインターネットの無い時代に、ここまで精神の病を描き、それを突き放したのは、素晴らしい。(後略)
昔大学の試験の過去問を解いていた時に、この中に入っている「影」という短編に出会った。その時に何か不思議な雰囲気のある小説だなとぼんやりと思い、そのままになっていた。 あとで古井由吉がすごい人であることを知って、それからこれも買っていろいろと読んだ。
(前略)掛け値なしの現代文学第一級の作品。 正直なところ多くの人が読了できないと予想されるが、この小説の価値がわかれば、村上春樹を読んでいるのがばからしくなるほど。
現代の日本文学に大きな足跡を残す作家だともいます。もっと評価されるべきで、ノーベル賞を是とはしませんが、世界的な水準にあることは間違いありません。
(前略)私は当時の古典にはほとんど知識が無く、しかも読み下す力も不足している。だから、この作品に登場する過去の様々な往生に関する古典を現代文で解説するように書いてくれている形式はとてもありがたかった。 そして何よりも、間に著者の日記体がはさまるところがいい。さらに、現代に起きた様々な往生に関する話も書かれているところが魅力だった。もしもこの内容が当時の古典のみだったとしたら、とても読み切ることが出来なかっただろう。私にとっては、古典・現代・そして著者の日記体。この絶妙なバランスがこの作品に惹かれる要因となった。(後略)
こういう文体の人がいることを初めて味わいました。 曖昧で具体的と言いますか、はっきり書かれていないというか、 はっきり書いてあるのだけれど、はっきり書いていないという 非常に眩惑的でした。 そういう行為はあったのか、無かったのかが話の肝なのだが、 最後まで、作者の思惑に振り回される、そんな初めての読書体験でした。
古井先生の作品が好きで何冊が読んでいるが、この本は先生の作品であるということと、古寺巡りという題材の両方に惹かれて手に取った。12編の作品は、何度読み直しても飽きるということがない。(後略)
一見短編集に見えるのだが、たくさんの短編が連作となっている長編。 老境へ向かう主人公が日々の中で友人と語ったり過去について思い返したり。ベースに見え隠れするのは人の「死」。だから決して穏やかな物語ばかりではない。しかし淡々と語られる。その浮遊感がたまらない。「正午前の炎天下に静まる雑木林」「枯芝の中から福寿草がぽっちりと咲いていた」「冬の走りの風が渡っていた」といった、実感を伴う季節感を感じさせてくれる表現が素晴らしい。
夫婦、父子、内縁関係の男と女などの微妙で時に危うい関係を二十年、三十年といった時間軸の中に浮かび上がらせてゆく、といった感じの短篇が多い。愛を描くでもなく憎しみを描くでもなく、砂漠でもなければ泥沼でもなく、ある一つの結末に向かって物語が収れんしてゆくというような展開でもないのだが、どの作品も現実的で淡々とした日常から、気づいたときにはまったくの非現実的な空間に放り出されている、そんな終わり方をする(あくまで読後感として、という意味ですが)。登場人物は五十代、六十代、読者層もその年代になるかと思う。
古井先生の作品は、いつの間にかするり、と物語が始まり、淡々と日々が描かれ、それでいてその中に奇妙な浮遊感がある。無理なく、辛くなく、淡々と読めるのだが、それでいて味わい深く、何度も読み返したくなる魅力にあふれている。そしてもうひとつ素晴らしいのが季節感。花や木々、行事の描写を織り込むことで、読者もその日常に引き込まれていく。この楽天記もそういった作品だ。
(前略)言葉の選ばれ方、構文などが枯淡でかつ重みがあり、その文章センスがそのまま老境を生きる心理的な処世ともなっているようだ。そこに、この小説が心地よく読める秘密があるような気がする。