奥泉光の小説おすすめ12選｜芥川賞受賞作や代表作を紹介

近畿大学文学部で教授をしている奥泉光は、夏目漱石の大ファンとして知られています。夏目漱石が好きすぎるあまり、漱石の文体を模倣して小説を書くなど好きが高じた作品も発表しています。

奥泉光の作品はミステリーが基盤です。SF要素やユーモアあふれる作品は読み手を飽きさせることなく物語に没頭させてくれます。デビュー時から文語体の書き手として評価されており、多種多様の知識をふんだんに詰め込んだ小説は、ファンの心をわし掴みにしています。

本記事では、奥泉光の受賞作・人気作や夏目漱石のオマージュ作品をご紹介します。奥泉光を読んだことがない方は、本記事を参考に奥泉光の作品の魅力を読んでみてください。

奥泉光は山形県出身の大学教授です。大学卒業後は研究職を目指し、研究者時代に『古代ユダヤ社会史』を発表しています。奥泉光の多種多様の知識は研究者時代に培われたと言えます。

1986年すばる文学賞に応募した『地の鳥天の魚群』が最終候補になり、後に「すばる」に掲載され小説家としてデビューしました。1994年に『石の来歴』で芥川賞を受賞し、一躍有名になります。この『石の来歴』は後に英語、仏語で翻訳され、世界各国からの高い評価を得ています。

1999年には近畿大学助教授に就任。教授としての責務を全うしながら執筆活動をつづけ、また、芥川賞選考委員を務めます。2021年の新刊には人気作『桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活』シリーズの続編を刊行しています。

2018年に刊行された『雪の階』は奥泉光の最高傑作とも言える小説です。二・二六事件につながる戦前昭和を舞台に描くミステリーロマンです。

ヒロインは華族の令嬢で、遺体で見つかった親友・寿子の死の真相を追い始めます。そこで出会う謎のドイツ人ピアニストや革命を語る陸軍士官、裏世界の密偵など多くの思いが交差していきます。

2020年に刊行された『死神の棋譜』は、奥泉光が大の将棋好きとしても知られてからの待望作でもありました。時代的に出るはずのない藤井聡太と思われる人物が、意外な形で登場する場面など将棋ファンはもちろん、将棋に疎くても存分に楽しめる作品です。

「将棋指しの呪い」と呼ばれる噂が物語の発端になります。何度も負け続けている旗手が、不詰めの図式を拾って姿を消します。類を見ない将棋ミステリーです。

奥泉光の長編SF小説です。文芸雑誌『すばる』に1998年から2000年まで連載され、2001年に書籍化されました。さらに、2008年に望月玲子作画で漫画化され多くの方の目に留まっています。

主人公であるジャズ・ピアニスト池永希梨子は演奏中奇妙な感覚に襲われます。オリジナル曲フォギーズ・ムードを弾くと、奇妙な感覚と共に希梨子の前に黒い服の女が現れるのです。幻影に導かれるようにベルリンへとワープしていきます。

文化人類学的要素が組み込まれている何とも奇妙な小説です。ミステリー・推理小説のようではありますが、種明かしが複雑で何回でも読めてしまうとファンの間で話題になっています。

現代文明を捨て自然との共生をめざしたコミューン運動「葦の会」へ参加した主人公は、目の前に広がるブナの森、荒廃した無人の入植地跡に驚きを隠せません。ここであった怪死事件は果たして事故なのかを解き明かしていくミステリーです。

太平洋戦争の真珠湾攻撃の時代を描いたミステリー小説です。メインストーリーは戦争ではなく、榊原大尉が操縦席で不可解な服毒死を遂げることです。榊原大尉の妻・志津子の依頼を受けて、榊原の死の真相を追いはじめます。

物語は時代背景を忠実に再現し、錯綜する謎の糸は加多瀬を時空を超えた迷宮へと導きます。そして、戦局はミッドウェーへと雪崩れ込みます。戦争と服毒事件の2方面からアプローチした物語です。

『「吾輩は猫である」殺人事件』は、夏目漱石の『吾輩は猫である』の文体を模写して奥泉光が手掛けた小説です。奥泉光による「もしも、猫が生きていたら」を描いたオマージュ作品で、夏目漱石ファンだけでなく奥泉光のファンも虜にした小説です。

漱石の小説では麦酒に酔ってみずがめの底で溺死したはずの「猫」が上海に現れます。上海で将軍・伯爵・虎君といった各国の猫と親しくなり、苦沙弥先生殺害を「猫」が追求するという物語です。

もしも、坊ちゃんが幕末の時代に生きていて忍者として修業したらどうなると思いますか。本作は『坊ちゃん』のオマージュ作品です。

尊王攘夷思想にかぶれたお調子者の悪友・寅太郎に巻き込まれ、坊ちゃんは幕末の京への旅に出立します。そして、坂本龍馬や新選組の志士たちと出会い、運命を変えていきます。歴史ファンタジーの最高傑作とも言える1作です。

漱石愛溢れる、いとうせいこうと奥泉光の2人で執筆された作品です。誰でも楽しめる夏目漱石の小説の楽しみ方を記した1冊になっています。有名な『こころ』や『三四郎』などを独特の視点でアプローチしていき、夏目漱石の逸話などもあわせて紹介しています。

奥泉光の小説を読むと、夏目漱石の『吾輩は猫である』や『坊ちゃん』も読みたくなってきたり、他のミステリーにも興味がわいてきます。たくさんの小説を手軽に持ち歩くには電子書籍リーダーがおすすめです。たくさんの小説と出会えるのも電子書籍リーダーの魅力の1つです。

SF・ミステリーが合わさった奥泉光の小説は、夢と現実、現在と過去が入り混じった作風が魅力です。また、奥泉光の膨大な知識がふんだんに詰め込まれた小説から新たな発見をする楽しさもあります。本記事を参考に奥泉光の作品に触れ、その世界観を楽しんでみてください。

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