三浦哲郎小説おすすめ14選|壮絶な人生から生まれた深い家族の物語。『忍ぶ川』など

芥川賞作家でもある小説家・三浦哲郎。家族をテーマにした作品が多く、幅広い年代の人におすすめの小説家です。三浦哲郎の作風の陰には、壮絶な生い立ちが――。今回は、おすすめの小説を14作ご紹介。受賞作品もわかりやすいため、三浦哲郎を知らない方にもおすすめです。

2023/08/10 更新

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「忍ぶ川」は、映画を観たのが先だったか、本を読んだのが先だったか、その印象は鮮烈に残っています。  若い男女が、明確な意思を胸に、背負わされた「血」と「貧しさ」の先に、互いを真摯に思い遣る心で、結ばれて、新たな人生に踏み出す様は、この上なく感動的で、「結婚」は斯く有りき、と夢見ながら、密かに声援を送ったものでした。その記憶は未だに、熱く残っています。  こうした「結婚」に、後悔はあり得ない。  今の若い人たちに是非、読んで欲しい小説です。

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 拳銃に込められた父の人生は何だったのか。人の命を奪うものでなく、自分の生をつなぎとめるお守りとしての拳銃。言葉だけで飾ることのできない懊悩があったのだろう。作者の物語の全てがここから始まった気がする。

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三浦哲郎という作家に興味を持ち、ぶちあたったこの本は、当時中学生だったわたしにはあまりにも重い命題を突きつけたものでした。家族とは自分にとって何なのだろう。人生のどこかで必ずめぐり逢う本として、とても考えさせられるものがありました。 先天性の色素を持たない体質を背負った姉妹。今の時代なら珍しいとはいえ、そのことで家族まで縛られることはないのですが、あの時代における地域の閉鎖性が次第に家族を追い詰めていくのです。家族というものは、支えにもなってくれるけれど、うっとうしく、それでも自分の存在価値はそこにあるわけで、つねにデリケートにときに乱暴に自分に降りかかる災難の火の粉のようなものであり、心にからみつく鎖であるということを、三浦哲郎はまるでわが身を削るかのように教えてくれたのでした。 のちに起こる、あまりに衝撃的な悲しい現実を三浦少年は受け止めていくしかなかったのです。ただ一つの救いは、三浦少年がその現実から目をそらさずに、自伝的物語として言葉で紡ぎ上げていったことで自分の中の家族に決別していくことが出来たことなのかもしれません。

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教科書に載った「とんかつ」、父娘の絆を描いた「じねんじょ」等 はどこかで読んだことがある人もいるかもしれない。 ごくふつうの日常のなかで、しぜんと感情があふれ出す一瞬。 筆者は瞬間にあらわれる心の機敏を捉え、丁寧に磨かれた言葉を用いて心の中に再現してくれる。 たった数ページの短い物語に凝縮された、さまざまな思いたち… めくるたび、ひとつひとつの話の完成度に驚くばかりだ。 色の違うモザイクガラスはたくさん集まって一幅の絵を作る。 タイトルの付け方も洒落ている。

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三浦哲郎「みちづれ」を読了。原稿用紙10枚程度の短編集です。本作品集のような出会いがあるから、読書は止められません。全ての作品に考えさせられます。全ての作品が人生賛歌です。いい事も悪いことも含めて、全て人生。やりきれないこと、不条理なこと含めて全て人生。こんなことを考えさせられます。 作者も東北出身。その温度感というか、体温が感じられる作品です。どこか温かいんです。最近の読書のなかでもベストです。読んでみましょう。きっと幸せな読書体験ができます。

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三浦哲郎の短編集「ふなうた」を読了。素晴らしい短編集です。人が生きる悲しみや喜び、そして苦しみや悲しみを映し出す。短編だから、全てを書ききらない。深い余韻に浸りながら、その後を想像したりする。そんな楽しい読書体験を与えてくれるのが、短編の楽しみである。 「短編集モザイク」シリーズは3冊あります。どれも名著。あなたの人生に何かしらの味をつけてくれます。

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三浦哲郎「わくらば」を読了。モザイクと銘打った短編集の第三弾です。本編も光り輝く物語の宝庫であった。短編という限られた世界の中に、様々な情景を映し出す作品たちにノックアウトされること必然です。 最後まで描ききらないラストを読み終え、私の脳内は物語の世界に引き込まれてしまいます。いったいどうなってしまったのであろうか、と。その想像している余韻が心地良いのです。 そんな短編を読みながら通勤し、職場の駅で降りると、すぐさま現実に戻されるのでした。

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昭和を代表する作家三浦哲郎氏の短編集。エッセー、小説それぞれ約半数ずつ収録されています。昭和の情景が立ち上る心温まる作品が多い一方、死をテーマにしたのも多いのが特徴です。書き出しの一行を大切にし、無駄を省き簡潔に書くことが著者の短編に対するモットーだそうですが、その描き方の上手さは流石としか言いようがなく、まさに短編のお手本といった感じです。「とんかつ」「盆土産」「メリーゴーランド」が私のお気に入り。

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センター試験にメリー・ゴー・ラウンドが出題されており、続きが気になり購入しました。試験の途中にもかかわらず解くのを忘れて感涙してしまい、周りにドン引きされた思い出の作品です。

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新小学4年になる息子が塾に通い始めました。 大の苦手である国語。国語のテキストにこのユタとふしぎな仲間たちが導入されていました。 日頃は漫画以外全く本に興味のなかった息子がこの本が欲しいと言ってきました。 どうも塾のクラスの子供たちは読んだことのある子が多かったようで、テキストには載っていない内容を知っているらしく、なんだか面白そうな話みたいだ!自分も読んでみたい!と言う事で購入しました。 すでに塾ではこのお話のところは終わっていますが、本がきた途端食い入るように読んでいる息子を見て驚いています。 活字嫌いの息子を変化させた、この本、この本を採用した塾のテキスト?に感謝です。 余談ですが、この本を読み終わるまで塾の宿題が進まず大変でした。(笑)

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百日紅が咲かない寒い夏に出会った姉弟の、冷たい物語。惚れ惚れするほど美しい日本語は流れ、砂夫と比佐の視点にすとんと溶け込める。そして姉弟の愛というのは、こうまで激しくなるものなのか。昂ぶる後半、特に最後の展開は気に入らないのだけど、前半の郷愁ただよう展開のゆったりとした流れは忘れがたいもの。気に入らないと言った最後にしても、隅から隅まで目に浮かんでくる描写には、感動せずにはいられない。「ちょっと宇宙船の外へ出たよんた気分だよ。」百日紅も咲かない冷夏でも熱を萌す、和風の長編。

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 三浦哲郎氏の「忍ぶ川」は、青春の書であった。氏の生い立ちを乗り越えて実直に生きようとする姿に、一入の感心と感動を覚えた。自分も彼に習って行こうと思ったし、以来彼の作品は、愛読書となった。その彼も2010年夏に亡くなり、新作を読むことは最早できない。そんな事実に至って時に、未読の作品を探したりして、本作に行き当たった。  本作は、文筆を生業にする男とその妻、そして女の子3人と犬一匹の家族を巡る物語で、著者の実際が下敷きになっていると思しき作品である。底に若き時代の激貧の暮らしや、他人に決して明かしたくはない痛みが潜み込む現在の日々が、著者特有の暖かく優しい筆致によって、「最初から終わりのまで変わりのないトーンで、淡々と、しかし丁寧に、描き出されている」(巻末エッセイ小川洋子)。  娘たちの成長に伴い、或いは夫婦や年老いた母親を巡り、どこの家庭でも起こり得る日常的な出来事が、腑に落ちる物語性をもって巧みに展開し、読んでいて気持ちが素直になって行く。そしていつの間にか、描かれる家族と取り巻く人々の人生よ安らかなれ、と念じる自分があり、これから先いろいろあろうとも、しっかりと前を向いて、このように生きて行こう、との思いに包まれる。私など既に遅きに失しているが、若い人に一読を、お勧めしたい本である。

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そうだ、三浦哲郎はこんなに平明な光にあふれ、こんなに深くセンチメンタルな小説を書いていたんだー。そう再認識させてくれる1冊です。 昭和6年青森生まれ。平成22年没。自殺や失踪で兄姉を次々と失ったという、自らの血脈を描いた「白夜を旅する人々」などの長編をものしつつ、他方で「短編集 モザイク」や本書のような短編の、たぐいまれな書き手でした。幻戯書房の編集者は、この作家の素晴らしさを如実に思い出させてくれました。 三浦ファンなら知る人ぞ知る「馬淵家」の平穏な日々を描いた短編連作集「素顔」。その続編とも言える本書の第一章「音」が、すでに著者の特質をじゅうぶんに明らかにしています。 主人公が胃潰瘍で大量吐血したとき体内で「あ、なにかが切れた、と思ったが、(略)これははじめて耳にする音であった。」と著者は書く。が、入院中「これとよく似た音を前にどこかで聞いたことがあるような気がした。」と伏線を張ったうえで、妻が主人公のために背広にそっと縫い付けたお守りの鈴の「音」から、主人公の疑問は愛犬カポネの臨終時の思い出に向かう。その描写はまことに簡潔に集約して印象鮮やかです。 妻と娘三人との家庭に起こる小さなさざなみの一つ一つを、それぞれしっかり見つめ、つかみとるような簡勁さで語る。そこには著者の体温もあって、温かい。三浦文学に欠かせない亡き母や郷里で一人暮らす弱視の姉も登場し、うれしい驚きにつつまれました。

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知らなかった。25年以上前にこんな「三浦哲郎ガイド」が文庫化されていたとは。「愛読者」であることを公言していましたが、返上しなければなりません。 副題に「自作への旅」とあるように、新潮同人雑誌賞を得た「15歳の周囲」から晩年の大作「白夜を旅する人々」まで、半世紀にわたる文業より選んだ23編について著者自らがつづった1冊。執筆の動機や背景、取材時の苦労話などを読むうちに、東京の家族や故郷青森、そして三浦家のルーツや果ては江戸時代の東北へと、それぞれの小説世界へと誘われていきます。 「道草に満ちた紀行文のようなもの」とあとがきにありますが、あちこち足を踏み入れるうちに、読者は三浦文学という広く豊かな草原に迷い込むことでしょう。

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