ミシンの仕組みを解説｜構造・原理を紹介！なぜ縫える？【上糸と下糸の仕組み】

ミシンは自宅で手軽に縫製作業ができる家電です。「子どもの頃お母さんに雑巾や給食袋を作ってもらった」といった思い出がある方もいますよね。最近ではハンドメイド需要も高まり、ミシンはより暮らしに身近なものになりつつあります。

しかし、そんなミシンがどうやって布を縫っているか、ご存じですか。「糸をセットするだけでどうして縫えるの？」「どういう仕組みで動いているの？」など、ミシンに関する疑問を抱く方も多いです。

この記事では、上糸と下糸との絡み方をはじめミシンの原理・構造をわかりやすく解説しています。ミシンの仕組みを理解するとともに、その種類や選ぶ際のポイントを把握しましょう。おすすめのミシンも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

家庭用ミシンは最もポピュラーなミシンです。1台で直線縫い・模様縫い・文字入れ・飾り縫いなど多様な縫い方ができます。糸を正しくセットできれば誰でもきれいに縫製作業できるといったメリットもあります。

また、自動糸調子が搭載されているモデルも多く操作自体は簡単です。しかし、自分好みの糸調子にはできないので、既製品と同じような糸締まりの美しい縫い目にはできません。また、ボビンケースが内蔵されているため、分解・メンテナンスには専用のドライバーが必要です。

職業用ミシンは基本的に直線縫い・縁かがりのみに特化したミシンです。家庭用ミシンと異なり、下糸の糸調子を自分で調整できます。また、搭載されているモーターが大きいためパワーがあり、革や厚手のウール・ジーンズ地も簡単に縫製できます。

1分間に縫える回数が家庭用は800針ほどに対して職業用は1500針と非常に多く、糸締まりがいいため家庭でも既製品と同じレベルの布製品が作成可能です。ただし、布端の処理やボタンホール用の穴かがりはできないため、家庭用ミシンと2台持ちする方もいます。

工業用ミシンは主に縫製工場で使用されているミシンです。職業用ミシンと違って家庭での使用は考えられていません。直線・ボタン付け・縁かがりなど、1台でできる作業はひとつだけ、といったように分業専用に設計されたミシンです。

1日中稼働するため非常に丈夫な造りになっており、工業用ミシンでしか使えない太さの糸もあります。そのため、家庭用・職業用にセットすると故障の原因になります。また、針も工業用ミシン専用のものが用意されており、一般的には目にする機会の少ないミシンです。

布を縫い合わせるのにメインで活躍するのが「針」と「釜」です。ミシンは先端に糸を通した針と、上下の糸を絡み合わせる「釜」の作動によって縫製します。

ミシンの縫い目には「本縫い」と「環縫い」の2種類ありますが、ここでは家庭用ミシンで採用されている本縫いに焦点を当てて解説します。

ミシン針には片側に溝が彫られています。上糸を通した針を布に刺したときに、溝がない側に糸のたるみで小さな輪(ループ)ができるようにするためです。ループの中に下糸が通ると針を抜くときに上糸と下糸が一緒に引き上げられ、結び目が縫い合わされる布の中心で締まるようになっています。

上糸と下糸の引き合う力のバランスが取れていないと、生地の表に下糸が出てくる・裏に上糸が出てくる・ほつれるなどトラブルの原因になります。また、上糸と下糸のバランスを「糸調子」といい、糸調子を自動で調節する機種も人気です。

ループに下糸を通すのが「釜」です。家庭用ミシンでは本体に内蔵されているため目視はできませんが、下糸を巻いたボビンをセットするボビンケースを「内釜」と「外釜」が二重に覆う形になっています。

ふたつの釜のうち、外釜だけがモーターで回転します。外釜にはループを引っかけるための「剣先」と呼ばれる突起がついており、外釜は剣先で広がったループの中を一回転します。このとき、外釜と内釜の間に通っていた下糸がループの中に通る仕組みです。

ミシンは非常に繊細な作業を高速で行っているので、小さな原因でも不具合の原因になります。故障を避けて安全に使用するためにも、針・糸などはそのミシンに合ったものを使いましょう。

家庭用・職業用ミシンの一番の違いは、本体に対する釜の向きです。現在の家庭用で主流の「水平釜式」はミシンと水平にボビンをセットします。初心者でも簡単に操作できますが、下糸を横向きに引っ張り上げるので縫い目がやや緩むのがデメリットです。

一方、職業・工業用で主流の「垂直回転釜式」はボビンがミシンに対して垂直にセットされます。下糸を下から引き上げるため「水平釜式」に比べて下糸の締まりがよくなり、美しい縫い目に仕上がるのがメリットです。また、絡みにくいといった特徴もあります。

ホチキスのような形状が特徴的なハンディミシンは、コンパクトで手軽に使えるのが魅力です。一般的なミシンと異なり、手で送りながら縫製を進めるので、ボビンと針が直接接続されています。

一本しか糸がないため、上糸だけを活用して縫製を行うことになり、生地の裏面は「チェーンステッチ」のような鎖状の縫い目ができます。ゆっくり縫える手動タイプの製品が存在する上に、縫い間違えても簡単に糸を外せるので、初心者でも取り扱いやすいのもメリットです。

足踏みミシンは、足元に設置されたペダルを踏むことで、踏板とモーターを繋ぐピットマン棒が連動し、針が上下するようになっています。ペダルの上下運動の速さがそのまま針の動きに繋がるためスピード調節が可能で、慣れてくると自分のペースに合わせて縫い進められます。

近年では電動ミシンが多くなりましたが、昔ながらのこの足踏みミシンは電気なしで動かせるのも嬉しいポイントです。

ミシンはさまざまな部品から構成されており、各部の名称や機能を覚えておくと作業がスムーズに行えます。名称はメーカーにより多少異なりますが、以下の表に代表的な部品の名称をまとめましたので、ぜひ覚えておきましょう。

初心者の方の中にはどのミシンを選べばいいのかお悩みの方もますよね。価格や性能によってたくさんのミシンが販売されていますが、実は初心者の方にこそ高機能な機種がおすすめです。一見すると価格が安く機能もシンプルな機種は初心者向けに見えます。

しかし、自動糸調子がついていない・速度調節ができない・ソーイングスペースが狭いなど、安価でシンプルな分、初心者には扱いにくい機種も多数販売されています。そのため、「ミシンに慣れてから機能に満足できず、買い替えたせいで結局高くついた」という声も。

家庭・職業用問わず、ミシンは高機能な機種を選んで長く愛用した方が結果的には安く上がり、満足のいく作業ができます。

ミシンを使っていてありがちな不具合のひとつが、「下糸がすくえない」といった問題です。

• 針がミシンと合わないものだった
• 針の取り付け向きが違っていた・
• 外釜がずれている・上糸の糸調子が合っていない

上記のように、さまざまな原因が挙げられます。中でもよくある原因が、外釜と内釜の間のホコリです。糸と接する場所なのでゴミが溜まりやすく、ゴミが原因で不具合が起きる場合があります。慌てて修理に持ち込む前に、一度ミシンの中をお掃除しましょう。

ミシンの仕組み・選び方について特集しました。ミシンは単に縫物の手間を省くための家電ではなく、使いこなせれば売り物のブラウスやドレスのようなものまで縫えるクリエイティブな家電です。ぜひ自分に合ったミシンを選んで、素敵なアイデアを形にしましょう。