【疾走する狂気と愛】鬼才の人気作家本谷有希子のおすすめ作品ランキング10選
2020/11/19 更新
映画、舞台、小説とあらゆるジャンルでその名を轟かす本谷有希子の魅力
文学界にとどまらず映画や演劇とあらゆるジャンルにおいて目覚ましい活躍を見せる稀代の女性作家本谷有希子。2007年には鶴屋南北戯曲賞を史上最年少で受賞し、その後も岸田國士戯曲賞、野間文芸新人賞に大江健三郎賞、三島由紀夫賞、そして遂には芥川龍之介賞と、小説家としても劇作家としてもその才能を遺憾なく発揮してきました。
主宰として劇団を擁するなど演出家としても積極的な活動をみせる本谷有希子。しかしそのキャリアのスタートは意外にも女優としての役者活動であり、役者としての経験が作品特有の雰囲気に影響を与えているとも考えられます。
今回はそんな本谷有希子作品の非凡な魅力や作品を選ぶ際のポイントについて触れていきながら、おすすめする10選をランキング形式で発表していきます。多種多様な魅力をみせる本谷有希子作品の中で自分だけの一冊を見つけてみて下さいね。
本谷有希子作品の選び方
映像化や舞台化を果たし大変有名になったタイトルの他にも、数々の文学賞や戯曲賞も受賞している本谷有希子作品。ここではどこから手を付ければいいか迷ってしまうという方に向けておすすめの作品選びのポイントをいくつかに分けてご紹介します。
短編?長編?読みやすい長さを考える
長編小説から短編小説まで本谷有希子作品では多様なスタイルの作品が存在します。まずは手始めに短編小説から読んでみるのも良いですし、初めから長編小説の色濃い本谷有希子の世界観にどっぷりと浸ってみるのもおすすめです。普段の読書スタイルを鑑みながら選んでみるのも一つの手ですね。
読みやすくお手軽な短編小説
一貫したテーマで描き切ることの多い本谷有希子作品ですが、短編集もいくつか発表しています。それは全く別の話であっても根底にあるテーマは同一のものであったり、全く世界も意味も繫がらない荒唐無稽な物語が幾つも繰り出されるパワフルなものであったりと様々です。
本谷有希子の非凡な才能がより瞬間的に描き出される短編集は、読み始めたら瞬時に新鮮でスリリングな世界へ導いてくれます。短編の場合、最初から綺麗に読み進めずその日に気になったタイトルを目次から選んでみたりと気分でチョイスできるメリットもあります。
また短編のほとんどは長くても30分から1時間以内には読み終えることのできる長さになっています。忙しい方でも通勤や通学の合間であったり就寝前の数十分などわずかな時間でトリップできる手軽さも魅力の一つです。
圧倒的な出力で描かれる長編作品
長編作品の魅力はやはり、どこまでも作りこまれた世界観と登場人物の描写の細かさを思う存分堪能できるところにあるでしょう。本谷有希子作品においてもそれは例外ではなく唯一無二の日常とも非日常ともとれる世界へ読者を誘ってくれます。
一つの特徴としてあげられることの多い本谷有希子作品の登場人物の突飛さ。どこか足りなかったり抜けていたり、決して完全無欠とは言えない彼らであっても物語を進めていくうちになぜか気持ちが動かされていきます。
それは自分との共通点が見えてきたり、自分が今抱えている問題とリンクしていたりと理由は様々です。この読み進めていく内にキャラクターへの感情の変化が楽しめるのも短編にはない長編の良さといえるでしょう。
何を読みたいか、ジャンルで選ぶ
ブラックコメディから恋愛もの、シュールナンセンスからダークファンタジーまで人間を様々な角度から描いていく本谷有希子作品で、自分の好きなジャンルから読み始めてみるのもおすすめです。またこの機会に自分が普段読まないジャンルに足を踏み入れてみるのも面白いですよ。
孤独や疎外感を描くブラックなシュールコメディ
決して清く美しいばかりではない本谷有希子作品では、しばしば行き場のない人間の孤独や絶望がテーマとして描かれています。この世界観はタイトルからも伺い知ることができ、マイナスな要素を孕むタイトルはしばしば人間の醜さややるせなさが取り上げられています。タイトルに光る独特のワードセンスも本谷有希子作品の特長です。
しかしながら実はそういったやるせなさなどは日常にも潜んでいる不安であったり恐怖のようなものをとことん突き詰めたようなものにも似通っています。だからこそ本谷有希子作品におけるブラックでシュールな笑いの在り方は、その暗さの中にある滑稽さや不格好な形の愛しさを感じさせてくれ、背中を押してくれるようなエールも秘められているのです。
ただ悲壮感のみで終わらないメッセージ性の強さが魅力的なのもシュールコメディの醍醐味ですね。
繊細な心と大胆な行動が混在する恋愛もの
恋愛小説というとどんな物語を思い浮かべるでしょう。甘い言葉や若く青いひと時、または熟成した穏やかな空気などがよぎる方は多いと思います。しかし本谷有希子作品における恋愛はやはりまた一癖ある物語ばかりです。
夫婦であったりカップルであったり、何か恋愛という名前を借りて生活を共にする男女とでも呼ぶべき恋愛のリアルがそこには描かれています。決して毎日が最高に幸せな訳ではないけれど日々を共に過ごす彼らの様子は、どこか後ろめたくなるほどの生々しさをにおわせてきます。
障害だらけだったり新しい愛のカタチであったりと、普通の恋愛小説に飽きた人におすすめしたいジャンルです。また現在自身の恋愛に悩んでいる人にも、新しい視点からのヒントをくれるかもしれません。
本谷有希子本人に迫るエッセイ集
エッセイとは筆者が体験や知識などをもとにして自由に意見や思考を述べた散文形式の文学の一ジャンルを指します。コラム連載を持っていたり、数々の雑誌に自身のエッセイを寄稿した経験を持つ本谷有希子の本領発揮ともいえる分野の一つといえるでしょう。
飾らずありのままの自然体で綴られながらも、独特の感性と誰にも見えない切り口で勢いよく立ち並ぶ言葉の数々はこれぞ本谷有希子節ともいうべき世界をしっかりと作り上げています。本谷有希子作品が好みに合うか判断したい人には迷いなくおすすめしたいジャンルです。
また固い小説の文章とは異なり、本谷有希子本人がそばで語っているかのようなあたたかな雰囲気と気楽さも読みやすく感じられる理由の一つでしょう。
舞台化映画化したものから読んでみる
本谷有希子作品の特長といえば作品における圧倒的な映画化、舞台化率の高さです。舞台化自体は本人が劇団主宰者ということや戯曲作品が多いことが理由として挙げられますが、近年における映画化作品の多さは本谷有希子作品がもつ独自性への評価の現れともいえます。ここではそんな映画化、舞台化作品を選ぶべき理由やその魅力について触れていきます。
本谷有希子の舞台化作品
冒頭でも触れましたように、本谷有希子はそのキャリアを役者活動からスタートさせていました。しかし劇作家としてその世界を演じる側から作る側へと転身を遂げた時、本谷有希子の非凡な才能は瞬く間に開花していったのです。
舞台化された本谷有希子作品の多くでは、一癖も二癖もある生き辛そうな人間が主人公として描かれています。そこで起きるトラブルや奇想天外な結末が本谷有希子の戯曲作品の持ち味であり、特徴の一つとしてしばしば取り沙汰されています。
この舞台化された作品を読むメリットは舞台との比較ができることにあります。想像で繰り広げた会話が目の前で肉がしっかりとついた状態で再度繰り広げられる様子は、新しい見方や発見を与えてくれるでしょう。また作者本人による演出を見ることができますのでより濃度の上がった本谷有希子ワールドを堪能させてくれます。
本谷有希子の映画化作品
では対して映画化された作品の魅力はなんでしょうか。それはやはり舞台同様映画との比較ができることと、一番のメリットは本谷有希子の代表作に触れられることといえます。
数々の名誉ある賞を受賞してきた本谷有希子作品の中でもやはり映画化された作品は世間的に見ても断トツに知名度も高く、本谷有希子を語る上で欠かせない作品となっています。一つの代表作に触れることで他の作品に移った際にもその変化や作風の違いを楽しめることも映画化作品を読む上での魅力の一つですね。
あえてメディア化されていない作品を読んでみる
最後におすすめするのは、映画や舞台などでメディア化されず純文学として評価を受けている作品です。映画化や舞台化されたものはやはり認知度も高くとっつきやすく感じられるかもしれません。しかし余計なイメージなどに捉われず、自分の価値観で世界に没頭した方にはまだメディア化されていない作品を強くおすすめします。
このような作品はまだ誰にも演じられていない登場人物たちと誰の演出も受けない世界を自分好みに空想しながら読むことができます。読書スタイルは人それぞれですので、自分が一番集中できる作品を選ぶことが大切ですね。
これだけは読むべき!本谷有希子のおすすめ作品ランキング10選
メディアファクトリー
乱暴と待機
舞台化映画化された話題作!4人の男女がおくる歪な愛憎劇
屋根裏から妹を覗く兄と、兄に覗かれながらそれをよしとする妹。そこにひょんな事から巻き込まれた恋人関係の男女。この世で最も残酷な復讐をされることを待っているという妹は、兄に喜んでもらうため来る日も来る日も「出し物」のネタを考えていたが…
のっけから歪な愛情関係を見せる男女と一見普通の恋人同士に見える男女4人の物語。第三者が現れたことによって不穏ながらも2人にとっての均衡が保たれていた世界が崩壊していく様は、悲劇とも喜劇とも受け取れます。ちょっと変わっているけれど成立している愛情の形をまざまざと見せつけられる作品です。
出版社 | メディアファクトリー | ページ数 | 224ページ |
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講談社文庫
腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
言わずと知れた出世作!暴走した自己愛の成れの果てとは
女優志望で自己愛の強い美人な姉とそんな姉に振り回されていく家族の崩壊神話。両親の葬儀をきっかけに故郷に戻った姉の澄伽は、過去に受けた高校時代の屈辱を晴らすため妹の清深へ復讐を仕掛けていくが…
異常なほどの自己愛と承認欲求にまみれた澄伽を追いつつ読み進めるうちに、周りにも潜んでいた異常性がゆっくりと暴露されていきます。誰しも一度は夢見ただろう「自分の特別さ」をどこまでも信じて疑わない澄伽の清々しいまでの自己愛っぷりと、暴走した利己主義の末にある意外過ぎる結末は必見です。
出版社 | 講談社 | ページ数 | 224ページ |
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講談社
嵐のピクニック
ブラックユーモア満載!キュートでビターな珠玉の短編集
ボディビルを目指す主婦や自転車のサドルとの恋物語など、奇想天外なお話13作からなる本谷有希子ワールドが思う存分に盛り込まれた短編集です。ちょっとおかしな人や視点が絶妙なさじ加減で盛り込まれて、クスリとしたりゾッとしたりと作品ごとに心が揺さぶられていく作品です。
こちらは講談社主催の文学賞である、第7回大江健三郎賞を受賞しています。本谷有希子作品におけるブラックユーモアやダークでコミカルなファンタジー要素が各話ごとにふんだんに盛り込まれています。本谷有希子作品で短編といえば迷わずおすすめしたい作品です。
出版社 | 講談社 | ページ数 | 208ページ |
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講談社
遭難、
本谷有希子の原点にして頂点!立つ場所を失ったのは誰なのか
舞台は学校の教室。いじめを苦に飛び降り自殺を図った息子の母親が担任の女性教師を激しく責め立てるところから物語は始まります。彼を自殺に追いやったのは誰なのか?その始まりとなる原因は?そんな中で放たれたあまりにも身勝手な一言が、事態をとんでもない展開へと導いていきます。
演劇界の「直木賞」とも謳われる鶴屋南北戯曲賞。それを史上最年少で受賞した本谷有希子の才能が溢れ出る非常にセンセーショナルでエネルギッシュな作品です。人間の内面の奥深くを描き出す本谷有希子作品の醍醐味を存分に味わえる作品といえます。
出版社 | 講談社 | ページ数 | 164ページ |
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まとめ
ここまで多種多様な魅力をみせる本谷有希子作品をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。映画、舞台、小説とメディアを超えた活躍を続ける本谷有希子の魅力的な作品群から自分だけの一冊を見つける手助けとなれば幸いです。エッジの利いたキュートでシュールな作品は、きっと今までに味わったことのない快感や後味を味わわせてくれます。自分の読みやすいスタイルで本谷有希子ワールドを思う存分楽しんでみて下さいね。
本サービス内で紹介しているランキング記事はAmazon・楽天・Yahoo!ショッピングなどECサイトの売れ筋ランキング(2020年11月19日)やレビューをもとに作成しております。
「絶対に自分の味方」になるようにと飼い犬に「絶対」と名付けた引きこもりの少女、江利子。そんな不器用な性格の彼女は、ある光景をきっかけに心の奥底から芽生え始めた欲望と本能に感化されていく…
2013年に発表された衝撃のデビュー作。コミカルにもシニカルにも描かれた、人の心に巣くう剥き出しの欲望が本谷有希子独特のセンスで描かれています。本谷有希子の世界観がデビュー当初から完成されていたことがありありと理解できる作品です。