【ハードでタフ!】人気作家・村上龍のおすすめ小説ランキング10選
2020/11/20 更新
時代を代表する作家-村上龍
1976年、武蔵野美術大学在学中、麻薬とセックスに溺れる自堕落な若者たちを描いた「限りなく透明に近いブルー」で群像新人賞、芥川賞を受賞し鮮烈な文壇デビューをしました。
代表作には、コインロッカーに遺棄された孤児の破壊衝動を描いた「コインロッカーベイビーズ」、日本を弱肉強食の社会に変革しようともくろむ秘密結社の闘いを描く「愛と幻想のファシズム」、パラレルワールドの日本を描く「五分後の世界」、日本社会に希望を失った中学生たちが、インターネットを通じて新たな社会システムを作りあげていく様を描いた「希望の国のエクソダス」、北朝鮮による日本への侵略を描く「半島を出よ」などがあります。
自身の小説を元に映画製作、カンブリア宮殿に出演、日本の金融・政治経済関連の問題を考えるメールマガジン「JMM」を主宰するなど文壇以外でもマルチに活躍しています。
村上春樹とともにその時代を代表する作家として目されています。
村上龍作品の1冊目の選び方
ジャンル別で選ぶ
基本的には、長編小説の執筆量が多い村上龍ですが、マルチに活躍しているため様々なジャンルの本を執筆しています。
初めて村上龍の作品に触れる方は、ハードでタフな作品には手が出しにくいと感じるかもしれません。そこで、ここではどのようなジャンルの本を執筆しているのかを紹介し、初めて手に取るべき作品はどのジャンルなのか、選び方を紹介していきます。
長編小説
村上龍は長編小説の執筆量が抜きんでています。
代表作である「限りなく透明に近いブルー」をはじめ、「五分後の世界」、「コインロッカーベイビーズ」など有名作品は長編小説が多いです。
村上春樹は語りで読ませ、村上龍は描写で読ませると評されるほど、村上龍の描写力は圧倒的です。ひとつひとつの挙動が細かく、綿密に描かれているため、気がつけば本の世界に取り込まれています。反面、描写力が圧倒的すぎるがゆえに、生々しい表現などが描かれた際には嫌悪感を抱きやすく、好き嫌いが分かれやすいのも事実です。
村上龍の作品に初めて触れる方で、ハードでタフな作品は大丈夫という方は、有名作品が多い長編小説から入るのをおすすめします。
エッセイ
村上龍はエッセイストとしても人気です。
代表作「すべての男は消耗品である」は1987年から2010年まで続きました。
日本の現代を冷徹に切り取り、歯に衣着せずに発言することで、読者に挑戦状を突きつけます。
その発言の根拠は、関連する文献を読むのは当たり前、その場所に行き実際に空気感を感じ、徹底的に取材するというスタンスから得た経験や知識から発せられているのかもしれません。
人生とは何なのか、物事の本質を見極めたい、そういう気持ちのある方は村上龍のエッセイを読めば答えやヒントが見つかるかもしれません。
対談・インタビュー集
マルチに活躍している村上龍は対談集・インタビュー集もおすすめです。
「カンブリア宮殿」に出演し、「JMM」を主宰している村上龍はとても経済に詳しいです。その村上龍がインタビュー・執筆することで、実際に経営している方と経営の仕組みや立場を知りたい方との橋渡しの役割を果たしています。
本業が作家ですので、文章も読みやすく、うまく編集されているので経済関係に興味がある場合、もしくは新社会人の方などはこちらの対談集・インタビュー集がおすすめです。
絵本
ハードでタフな小説や経済関係の作品が多い村上龍ですが、一方では絵本も書いています。
特に有名な作品は「13歳のハローワーク」です。教材として採用されるなど、一度は耳にしたこともあるのではないでしょうか。
514種の職業を紹介している本です。好奇心に応じて探せるように分類されていて、自分の好きな分野のページを開くと、関連する職業がそれぞれ紹介されています。
13歳と銘打たれていますが、大人になって手に取ってみても新たな発見があるはずです。
昔の夢を思い出したい方、転職を考えている方におすすめです。
メディアに取り上げられたものから選ぶ
映像化された作品
デビュー作である「限りなく透明に近いブルー」では、村上龍自ら監督・脚本をしている作品をはじめ、数多くの作品が映像化されています。
特に「69 sixty nine」は宮藤官九郎脚本、妻夫木聡が主演したことで、とても有名な作品です。この作品も原作は村上龍の同名の小説です。
映像化された作品を観てから、原作を読むことで違った視点から作品を楽しむことができるはずです。
受賞作品
芥川賞の選評で「この数年のこの賞の候補作の中で、その資質は群を抜いており<中略>因果なことに才能がある」と評されるほど、抜群の才能を持っている村上龍。
芥川賞をはじめ、読売文学賞、野間文学賞、毎日出版文学賞など数多くの賞で受賞しています。
受賞している作品というのは、プロが評価を下し、読者になにかしらの影響力があり、読んでもらいたい、後世に残したいと思われている作品であることが多いです。
その点で、受賞作品から村上龍の初めての1冊を選ぶのもいいと思います。
電子書籍を選ぶ
村上龍電子本製作所を自ら設立するほど、電子書籍には力を入れている村上龍。
電子書籍を利用する方は、徐々に増えてきているという印象を受けます。
村上龍はipadのプレゼンテーションに衝撃を受け、ipadで新しい小説を読めるようにしたいという思いから、電子書籍化に本腰を入れ始めました。
現在では、25冊以上を配信しています。今までの紙の本とは違う、映像、音楽、画像などを組み合わせた全く新しい表現方法に挑戦しています。
電子書籍を日常的に利用している方、電子書籍が気になっている方は村上龍電子本製作所から入って新たな表現を体感することで村上龍の作品に触れてみるのもいいと思います。
村上龍の人気・おすすめ本ランキング10選
集英社
昭和歌謡大全集 (集英社文庫)
おばさんVS若者
カラオケ好きのおばさんと孤独な若者たちの殺人合戦を描く作品です。
第1章から第10章までのタイトルが昭和の歌謡曲で形成されています。
あらすじだけ見ると、非常に重たい作品に思われますが、中身はハチャメチャ感のある喜劇的な文体でスカッと読めます。
社会的な作品が多い村上龍ですが、この作品はエンターテイメント小説です。
難しい小説は読みたくない、だけれども村上龍の作風をしっかりと味わってみたいという方は、この作品から読み始めるのもいいと思います。
松田龍平主演で映画化もされているので、読む前に映画から入るのもおすすめです。
発売日 | 1994/3/18 | ページ数 | 224 |
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幻冬舎
55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫)
再出発の物語
婚活、再就職、家族の信頼の回復、友情と出会い、ペットへの愛など、もう一度人生をやり直したい人々の背中に寄り添う物語。
この作品では、ごく普通の人々に起こるごく普通のことをリアルに描いています。
何が起こるかわからない人生、生きていれば必ず厳しい状況に直面します。その状況で諦めるのではなく、打破して前向きに生きていく。そういう気持ちにさせてくれる作品です。
ハードでタフな印象のある村上龍ですが、この作品ではとてもほっこりとした物語を描いています。その点から、村上龍に興味はあるがハードな作品は苦手という方に、特におすすめの作品です。
若い人から高齢の方まで、読む年齢ごとに新たな発見があるのではないでしょうか。何歳になっても、何回でも読みたい作品です。
発売日 | 2012/12/5 | ページ数 | 333 |
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文藝春秋
69 sixty nine (文春文庫)
青春バンザイ
1969年、佐世保で大暴れした高校生たちの青春物語。
ベトナム戦争の時代の基地の街・佐世保で明るく楽しくエネルギッシュに高校生活を謳歌する若者を描いた作品です。
思春期ゆえの葛藤や苦しさを描くよりも、笑いや勢いなどとにかくエネルギッシュを全面に描くことで明るく楽しい小説になっています。
また、現代とは違う、1960年代のノスタルジックな空気感も描かれており、体験はしていなくても擬似的に体感できる作品だと思います。
ページ数も246ページと短く、村上龍ってどんな作品を書いているんだろうと興味を持った方が、一番気軽に手に取れる作品だと思います。
とにかく明るく、元気になりたい時に読みたい作品です。
発売日 | 1987年 | ページ数 | 246 |
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幻冬舎
イン ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫)
猟奇殺人者と行く歌舞伎町ツアー
仕事で日本に来たフランクと、外国人向けの性風俗ガイドをしているケンジ。二人で過ごす中で、だんだんとフランクに不信感を抱くケンジ。その不信感は徐々に現実感を帯びていく。
非常に平和な題名ですが、中身はグロテスクな描写の多い作品になっています。
村上龍の真骨頂である圧倒的な描写力、物語への没入感を味わうことができます。
猟奇殺人鬼や孤独がゆえに売春してしまう少女。1997年、村上龍が描いた小説の世界では病的なものとして捉えらえていたものが、現代では当然のようにあるものとなっています。
20年以上前の作品ですが、日本というコミュニティに疑問を抱いた時、ホラーミステリーを読みたい方などにおすすめの作品です。
発売日 | 1997/9 | ページ数 | 304 |
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講談社
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)
カリスマによる新たなる世界の創造
激動する1990年、世界経済は恐慌へ突入。日本は未曾有の危機を迎える。カナダで狩猟をしていたトウジはゼロと出会うことで、日本で独裁者として頭角を表していく。カリスマによる新しい世界の創造。
衝撃の政治経済小説です。
トウジは「弱肉強食」の思想を掲げて世界に乗り込んでいきます。その弱者というのは、自分で考えもせず行動もせずプライドももたず、社会に支配され自分の快楽をごまかして生きているような奴隷人間だと主張します。
本当にヒトにとって理想的な社会とは何なのか、非常に考えさせられます。
刺激的な内容であり、情報量が非常に多い作品です。
上下巻1000ページ以上の作品のため、がっつりと読みたい方に適しています。
発売日 | 1990/8/3 | ページ数 | 上巻 504 下巻 542 |
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幻冬舎
新 13歳のハローワーク
好きを仕事にする
「国語が好き」「社会が好き」「理科が好き」など好きな教科の扉をあけると、胸がときめく職業図鑑が広がります。マスコミで取り上げられたり、学校の教材として採用されるなど大きな話題となり、ミリオンセラーになった作品の改訂版です。
単にお金を稼ぐために働くという空気感が、大人たちの間で蔓延しています。
村上龍はこの作品を通して、仕事をするということは単にお金を稼ぐためだけではなく、充実感や誇り、仲間や友人などその人と社会を繋ぐ架け橋のようなものだということを子供達に伝えたかったのではないでしょうか。
子供だけでなく、大人の方も再度自分は昔何が好きだったかを思い出し、改めて自分自身を見つめ直すきっかけになる作品だと思います。
全世代におすすめできる作品です。
発売日 | 2010/3/25 | ページ数 | 561 |
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講談社
新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫)
現代文学の傑作
1972年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。コインロッカーに遺棄された赤ん坊が、退廃的で閉塞感のある世界と対峙する物語。
当時起こったコインロッカー幼児置き去り事件を題材にした作品です。
舞台化されていたり、おすすめの小説として紹介されていることも多く、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
全編に苛立ちと衝動、感情の高ぶりが満ちています。
キクは世界と対峙し、ハシは世界と同調しようとする。コインロッカーに置き去りにされた二人の対称的な性格や生き方はとても印象に残ります。
社会小説、冒険小説、SF小説、純文学など様々な面を見せてくれる作品です。村上龍に興味を持った方は必読の書です。
一説によると、この小説を読んで村上春樹は衝撃を受け、小説家一本で生きていこうと決心したそうです。
発売日 | 1980/10 | ページ数 | 576 |
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幻冬舎
半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)
日本の弱点
2011年春、9人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠する。さらに、2時間後には、約500名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。
北朝鮮問題にとどまらず、現代日本が抱える経済・金融・政治・外交の問題などあらゆる問題を題材にしています。村上龍の卓越した知識と綿密な取材により、とてもリアルに描かれており、現実に起こるのではという錯覚すら覚える作品です。
非常に多くの情報量や細かな描写をしながらも、圧倒的な文圧で読者を圧倒します。章ごとに多彩な人物の視点で物語が進行するので読みやすく、立場が違えば考え方も違うということがわかります。
読み物としても面白く、寝る間も惜しんで読み続けてしまうほど中毒性がある作品です。がっつりと読みたい方、日本の諸問題について考えたい方などにおすすめの作品です。
発売日 | 2005/3/25 | ページ数 | 上巻 509 下巻 591 |
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幻冬舎
五分後の世界 (幻冬舎文庫)
日本人が忘れてしまった誇り
五分のずれで現れた、もうひとつの日本は人口26万人に激減していた。1954年のポツダム宣言を受け入れず、連合国に分割統治されながらも、アンダーグラウンドと呼ばれる地下都市を築き、連合国にゲリラをしかけ続ける日本。現在の日本とは違う、もしかしたらこうなっていたかもしれないというパラレルワールドを描いた作品です。
主人公の小田桐はふと気がつくと、どこだか解らない場所を集団で行進していた。その中で、小田桐は物質的には決して豊かではなく、平和でもない代わりに日本国民としての誇りを持ち、諸外国から畏怖と尊敬を集めている日本国に徐々に惹かれていきます。
堕落と惰性の生活を送っていた主人公が、急にゲリラとして戦うという設定から、もし自分が急に戦いのある日常を過ごさなければならないとなった場合、全然何もできない人間なのではないかと考えさせられます。
生きるためのエネルギーを感じ、平和な日本に暮らす自分自身には何が足りていないのかを考えさせられる作品です。
著者自身も「今までの作品の中で、最高のものになったと思っている」と述べているように、全ての村上龍に興味を持っている方におすすめできる作品です。
発売日 | 1997/4/1 | ページ数 | 303 |
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村上 龍のおすすめ商品比較一覧表
商品 | 商品リンク | 特徴 | 発売日 | ページ数 | |
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1
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五分後の世界 (幻冬舎文庫) |
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日本人が忘れてしまった誇り |
1997/4/1 | 303 |
2
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半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫) |
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日本の弱点 |
2005/3/25 | 上巻 509 下巻 591 |
3
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新装版 コインロッカー・ベイビーズ (講談社文庫) |
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現代文学の傑作 |
1980/10 | 576 |
4
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新 13歳のハローワーク |
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好きを仕事にする |
2010/3/25 | 561 |
5
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愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫) |
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カリスマによる新たなる世界の創造 |
1990/8/3 | 上巻 504 下巻 542 |
6
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イン ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫) |
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猟奇殺人者と行く歌舞伎町ツアー |
1997/9 | 304 |
7
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69 sixty nine (文春文庫) |
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青春バンザイ |
1987年 | 246 |
8
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55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫) |
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再出発の物語 |
2012/12/5 | 333 |
9
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昭和歌謡大全集 (集英社文庫) |
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おばさんVS若者 |
1994/3/18 | 224 |
10
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希望の国のエクソダス (文春文庫) |
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中学生による革命 |
2000/7/19 | 452 |
まとめ
長編小説、社会派小説をはじめ、子供達や定年後の方々の生活や未来に優しく寄り添う作品も執筆する村上龍。マルチに活躍しているがゆえに、様々視点から描かれる世界観や主張は、自分とは何か、自分はどう生きればいいのかを考えさせられます。今回ご紹介させていただいた作品以外にも、作者の趣向を凝らした面白く考えさせられる作品はたくさんあります。ぜひ1度、村上龍の作品を手に取ってみてはいかかでしょうか。
本サービス内で紹介しているランキング記事はAmazon・楽天・Yahoo!ショッピングなどECサイトの売れ筋ランキング(2020年11月20日)やレビューをもとに作成しております。
「この国には何でもある。ただ、希望だけがない」
経済が停滞し閉塞感の漂った日本。そんな社会に絶望した約80万人の中学生達はある日、学校を捨てる。彼らが結成した「ASUNARO」はインターネットなどを駆使して新たなビジネスを始め、新たな社会システムを作り上げていく。
政治、経済、金融など細かい部分までよく描かれています。
2000年に書かれた作品ですが、ネットビジネスや仮想通貨など現代との類似点も多く、村上龍の先見性に驚かされる作品です。
村上龍の圧倒的な情報量や知識量から導き出された先見性は、いつかこのような現実が実際にくるのではというリアリティを伴って読者に押し寄せてきます。
鬱々とした気持ちの時、社会に疑問を持った時、この作品を読んでみるとスッキリするかもしれません。