剣客も強いだけでは食べていけない天下泰平の次代を舞台にした剣豪小説です。年老いても天下無双と呼ばれる秋山小兵衛とその息子大治郎を中心に、物語は描かれます。女好きで小粋な小兵衛と堅物の大治郎が対照的です。

基本的な流れは悪を倒す完全懲悪ですが、池波正太郎らしい味わい深い物語が展開されます。剣客同士の戦いも描かれますが、街並みや風俗が伝わってくる一井小説のような魅力もあります。短編集で読みやすく、時代小説に慣れていない方にもおすすめです。

大ヒット作として有名な吉川英治の時代小説です。野獣のような若者だった武蔵が、二天一流の開祖として開眼するまでを描いています。エンタメ要素満載で非常に読みやすい内容になっているのが特徴です。武蔵の周りの登場人物も魅力的に描かれています。

レビューもどんどん引き込まれてあっという間に読んでしまったという内容が多いです。哲学的な内容をあえて平易に書いている点なども評価されています。時代小説は初めての方にもおすすめです。

昭和30年代に連載開始し、剣豪小説のブームを作った名作です。宣教師と大目付の娘の間に生まれたハーフの剣士眠狂四郎が必殺の円月殺法で、数々の事件を解決していきます。一見完全懲悪のようですが、主人公が悪役でもおかしくない感じなのが異彩を放っています。

剣豪小説ですが、人情物や推理物などさまざまな要素が入った多彩な物語は非常に面白いです。短編の連作なので、1回の話はさくと読むことができます。文体が古いと感じるかもしれませんが、それを忘れてしまうほど魅力のある時代小説です。

新選組の副長土方歳三の生涯を描いた時代小説です。土方歳三は、元々武士ではない人間も多かった新選組を最強集団と呼ばれるまでの組織にした人物として知られています。写真が残っており、最近はイケメン剣士として女性人気も高いです。

フィクション部分が少ない時代小説なので、リアルな土方歳三の物語が読めます。ビジネスマンからは、組織作りの参考になるという意見も多いです。刀で切り合う場面はリアルな光景が目の前に浮かぶというレビューもあり、迫力の剣豪小説が読みたい方におすすめです。

筆頭家老を暗殺した幻の剣の使い手を探す藩内の抗争を描いた「馬の骨」と6編の作品が収録された短編集です。藤沢周平の最高傑作とも呼ばれる作品で、剣豪小説としてだけでなくミステリーとしても楽しめます。

活字で読んでも手に汗握る剣豪小説の醍醐味が味わえる作品です。秘剣馬の骨の使い手も意外な人物になっており、最後まで楽しんで読める時代小説です。

現代剣道に大きな影響を与えた剣豪千葉周作を描いた時代小説です。合理性を徹底的に貫き、日本人の考え方そのものに影響を与えたと評価される千葉周作の姿は作品の中でもしっかりと描かれています。等身大の悩める若者としての千葉周作の姿も読むことができます。

単に強かっただけでなく、万人が習得できる剣術を追求しようとする千葉周作の姿が他の剣豪小説とは異なる魅力を出しています。超人的なヒーローではない共感できる剣豪小説が読みたい方におすすめです。

悪役として時代劇に登場することが多い柳生一族の剣豪たちを描いた時代小説です。主人公として描かれることも多い柳生十兵衛だけでなく、友矩、宗冬、連也斎など様々な剣豪の物語が読める短編集です。

柳生一族が隠密集団というイメージを定着させた作者の作品だけに、ダークな内容が多くなっています。激しい戦いや修行の場面が多い中で、政治に関係した場面が多く描かれるのも印象的。権力と剣のはざまで苦悩する剣士の物語が読みたい方におすすめです。

剣豪将軍の異名を持つ室町13代将軍足利義輝を主人公にした時代小説です。塚原卜伝から券を伝授された足利義輝は剣の達人として知られており、襲われた際に戦った逸話も残っています。小説はリアルな内容ではありませんが、娯楽小説として楽しめるものなっています。

天下一の武人になると誓った義輝の活躍が描かれる爽快な物語です。明智光秀・織田信長・武田信玄・上杉謙信などが登場し、政治的な争いも楽しめます。さわやかな物語が読みたい方におすすめです。

残酷無常時代劇として人気を博した漫画「シグルイ」の原作を収録した時代小説です。市狂いの原作に当たる「無明逆流れ」を含む11の作品が収録された短編集になっています。マゾの剣士やガマ剣法など、登場する剣士が非常に個性的で話を盛り上げてくれます。

試合そのものの描写は短時間で終わってしまいますが、剣士1人1人の背景を丁寧に描くことでその生き様や死が鮮烈になっています。残酷な時代小説が好きな方におすすめです。

歴史上の剣豪の秘剣の秘密を紐解いていく異色の剣豪小説です。手裏剣の達人にして男装の麗人である毛利玄達と柳生十兵衛が各地で、秘剣の謎を解き明かしていきます。剣豪小説らしい戦いはありませんが、秘剣の謎を解明する面白さは剣豪小説ファン必見です。

剣豪同士が戦わなかった理由も面白い考察がされています。登場人物のキャラクターも面白く、すらすらと読み進めることができます。ライトな気分で読めますが、剣豪好きならかなり楽しめる時代小説です。

殺人事件を解決するため、ぼんくら同心の井筒平四郎が奮闘する物語です。ミステリー小説を手掛ける宮部みゆきの作品だけあって、ミステリーとして完成度の高い作品になっています。江戸を生きる人々の描写も素晴らしく、市井小説としても評価が高いです。

前半はゆったりと話が進んでいくようにも感じますが、後半につながる伏線が散りばめられています。展開は陰鬱になる部分もありますが、平四郎のとぼけた性格が暗い雰囲気を和らげてくれます。時代小説は普段読まない人にもおすすめの捕物帳です。

4度にわたってテレビドラマ化され、4作目は原作の全話を撮影したため終了せざるを得なかった人気作です。凶悪犯を専門で取り締まる火付盗賊改方を描いた捕物帳となっています。史実の主人公が人情味のある人物のため、人情物の金字塔と呼ばれることもあります。

主人公の長谷川平蔵が魅力的なだけでなく、盗賊や密偵も魅力的でさまざまなドラマが描かれます。身分による言葉遣いの使い分けがされるなど描写がリアルですが、かなり読みやすい時代小説になっています。

妖に囲まれた病弱な主人公一太郎が難事件や珍事件を解決していく伝奇小説です。一太郎は猟奇事件に巻き込まれたりしますが、不気味な感じではありません。登場する妖がコミカルで愉快なので、楽しく読み進めることができます。

テレビドラマもされた人気作で、単行本は20巻が刊行されています。長いシリーズですが、短編でどこからでも読むことができるのも魅力です。

もっとも有名な捕物帳の1つと呼ばれ、何度も映像化されている時代小説です。銭形平次といえば寛永通宝を投げて攻撃する投げ銭が有名ですが、原作では投げるシーンはそれほど多くありません。

同時代の推理小説家からの評価は高くなかったと言われていますが、推理物として楽しめると言うレビューは多いです。人を縛るのが嫌で犯人を見逃すことが多い平次の人柄が魅力的に描かれています。捕物帳が読みたいならおすすめの作品です。

推理小説の大家横溝正史作の捕物帳です。人形のような美男子の佐七が事件の謎を解き明かします。おどろおどろしい雰囲気とよく考えられたトリックが楽しめる時代小説です。本格的な推理ものなっていますが、人情話が中心でユーモラスな描写もあります。

本格的な謎解きが楽しめる捕物帳が読みたい方におすすめです。短編が多くすべての作品を読むのは困難な状態が続いていましたが、全180作が確定され2019年から完本の刊行がスタートしています。何度も映像化され、2016年にもドラマ化されています。

捕物帳の元祖として知られる名作です。元岡っ引きの半七老人が昔話を語るという形で物語は始まります。色恋沙汰が絡んだ事件から、妖怪が絡むといわれる怪事件まで半七が解決していきます。

読者が推理を楽しむのは難しいですが、江戸の街並みや人々の描写で非常に高い評価を受ける作品です。江戸時代の雰囲気を味わいたいなら、おすすめの時代小説といえます。100年以上前に作られていますが、現代でも古さを感じずに楽しめるというレビューも多いです。

江戸時代を舞台にした傑作ハードボイルドと呼ばれる捕物帳です。元岡っ引きの彫師の伊之助が怪事件を解決していきます。アメリカのハードボイルドな探偵小説をイメージする物語は、ハードな展開が多いです。

主人公もストイックで硬派な性格に描かれています。海外のミステリーファンからも評価の高い作品です。捕物帳が好きな方だけでなく、海外の探偵ものが好きな方にもおすすめの時代小説です。

江戸一番の札差・三国屋の末孫の卯之吉が同心となり、事件を解決していくユニークな捕物帳です。元々武士ではない卯之吉は剣の腕が立つわけではありませんが、財力や放蕩生活で得た知識を活かして事件を解決していきます。

事件を解決するといっても名探偵のように華麗に謎を解くわけではなく、偶然が重なって事件が解決することが多いのが面白いです。肩の力を抜いてライトに読める作品になっています。娯楽性の強い時代小説が読みたい方におすすめです。

明治時代を舞台にした異色の捕物帳です。事件の相談を持ち込まれた勝海舟が推理を間違えて、主人公の結城新十郎が真相を解き明かすという流れが基本になっています。捕物帳となっていますが、犯人を捕まえる場面などは基本的にありません。

あくまで、謎解きを重視した本格推理のような作品になっています。純粋に謎解きを楽しみたい方におすすめの時代小説です。舞台を近未来にしたアニメ「UN-GO」が2011年に放送され、2020年12月には福士蒼汰主演でドラマ化されています。

宮部みゆきが選んだ女性作家8人の作品を収録した捕物帳のアンソロジーです。すべての作品が違う作家の手で書かれているので、様々な作風の捕物帳を楽しむことができます。高い評価を受ける作品が集められている点も、安心して読めます。

表紙のイラストのせいで女性が主人公の捕物帳の印象がありますが、女性が主人公の話は収録されていない点は注意が必要です。女性作家の書いた時代小説を読みたい方におすすめのアンソロジーです。

仇討ちで父を失った武士の子が松吉と名を改め、商人として生きていく姿を描いた市井小説です。銀二貫は、井川屋の主人和助が松吉を助けるために支払った金額のことです。松吉は井川屋の丁稚として働き、苦労しながらも成長していきます。

さまざまな展開が待ち受けているので、飽きずにどんどん読み進めることができます。一生懸命働く松吉を支えてくれる周囲の人々の優しさが心に染みる一井小説です。

実在の医師がモデルの赤ひげこと新出去定を主人公にした市井小説です。貧しい庶民の病に取り込む厳しい現実や赤ひげと弟子の魂の触れ合いが描かれます。無骨な赤ひげの真意はなかなか分かりにくいですが、医師として最善を尽くそうとする姿が心に突き刺さります。

弟子の安本登は、赤ひげに反発しながらもその考えを理解することで少しずつ惹かれていきます。黒澤明監督、三船敏郎主演の「赤ひげ」は現在でも高い評価を受けており、最近もドラマ化されています。

上方料理の店つるやを舞台にした人情物の市井小説です。故郷の大阪で両親を失い天涯孤独となった主人公の澪が、つるやの料理人として奮闘する市井小説です。江戸と大阪の味の違いに戸惑う澪ですが、研鑽を続けることで腕を上げていきます。

商売敵の妨害や悲運などもありますが、澪はめげずに立ち向かっていきます。周囲の人々も魅力的で料理の描写はかなり細かく描かれています。

市井小説で評価の高い藤沢周平の短編集です。「花のあと」の他に「旅の誘い」「冬の日」など7つの短編が収録されています。市井小説だけでなく武家小説も収録されており、バリエーションのある話が楽しめます。

短い話が多いので、時代小説に慣れていない人でも読みやすいです。ハッピーエンドが多いので後味の悪い気分になることもありません。花のあとは2010年に映画化、冬の日は2015年に映画化されています。

金貸しの手伝いをする謎の男浅吉が主人公の時代小説です。浅吉は斬新なアイデアで借金を返済させ、借金にあえぐ人たちを助けていきます。面白い物語を読み進めていくうちに、江戸時代のお金の仕組みが分かるユニークな市井小説です。

正体がなかなか分からない浅吉や周囲の登場人物も個性的で、楽しんで読み進めることができます。一風変わった市井小説を読みたい方におすすめです。

居酒屋を営むお夏が主人公の人情物の市井小説です。主人公は毒舌で化粧っ気もなくくそ婆ァと呼ばれていますが、居酒屋の料理の味は評判になっています。そんなお夏は夜になると美女に変身し、悪党を成敗するという裏の顔があります。

ダークな雰囲気もありますが完全懲悪で、さまざまな人々とお夏の交流に心が温かくなります。ミステリー要素や美味しそうな料理など、様々な魅力のある時代小説になっています。

とむらい屋を営む颯太を主人公にした物語です。とむらい屋は現代の葬儀屋に当たりますが、自殺・心中・死産など様々な死と向き合うとむらい屋の考えや奮闘が描かれます。死に対して淡々と向き合う颯太の態度は、過去の出来事に原因があります。

とむらいは死者のためではなく、生きている人間のために行うというとむらい屋の思いが伝わってきます。現代とは異なる江戸時代の価値観や死生観が理解できる一井小説です。

菓子店南星屋を舞台にした感動の物語です。元武士の治兵衛が菓子を作り、出戻り娘のお永とひと粒種の看板娘お君が切り盛りする南星屋は売り切れ御免の繁盛店です。しかし、南星屋は、他人には明かせぬ秘密がありました。

家族愛や周囲の人々の優しさが、本当に暖かい市井小説です。登場する和菓子の描写が本当に美味しそうなのも、作品の魅力になっています。

江戸時代の雰囲気が最も感じられるとも言われる長屋を舞台にした市井小説です。鯖縞模様のオスの三毛猫サバが人間より偉そうにしている鯖猫長屋で、次々に不思議な事件が起こります。

「心がほっこりあたたまる、大江戸謎解き人情ばなし」という文句の通り、ミステリー要素のある人情ものになっています。猫好きの方にもおすすめの時代小説です。

美味しそうな料理と人物描写が魅力の市井小説です。武家の次男坊の林只次郎が通う居酒屋ぜんやを舞台に、クセがあるが魅力的な人物が登場します。登場人物は誰もが悩みを抱えていますが、優しい描き方に心が温かくなります。

作られる料理も美味しそうで読んでいると食欲がわいてきます。心温まる物語や食事が美味しそうな話が読みたい方におすすめです。只次郎とぜんや女将のお妙の仲がどうなるのかも注目です。

股旅物の傑作短編集「股旅新八景」に、傑作中篇「人斬り伊太郎」を収録しされています。不朽の名作と呼ばれる9作品が揃っているので、股旅物の時代小説を読みたい方におすすめです。股旅の世界だからこそ、波乱万丈の物語が楽しめます。

股旅物としては、珍しい女性の股旅お蝶が登場する作品があるのも特徴です。お蝶が非常にかっこよく、他の作品はそれぞれの個性があるので楽しんで読むことができます。

股旅物の定番として有名な時代小説です。自分以外は誰も信じず、誰からも信じられない生き方を貫くのが紋次郎の生き方。そんな生き方を貫きながらも人に裏切られ、それでも人を助ける紋次郎の生き方がハードボイルドでかっこいいです。

読み進めるだけでも面白いですが、最後にアッと驚くどんでん返しが用意されているのもこの作品の魅力になっています。股旅物を読んだことがない方にもおすすめの時代小説です。推理物として楽しめる作品も書かれています。

股旅物の作者として有名な長谷川伸の戯曲作品として有名な7本を収録した傑作選です。5つの頃に生き別れた番場の忠太郎が母親を訪ねる「瞼の母」や「沓掛時次郎」、「一本刀土俵入」、「雪の渡り鳥」などが収録されています。

文庫本などでは入手困難な長谷川伸の戯曲作品の代表作がほとんど網羅されています。長谷川伸の作品が読みたいなら、外せない1冊です。

侠客として有名な清水次郎長ですが、明治維新後はかたぎとして富士山麓の開拓などを行ったことも知られています。明治の世に生きる次郎長一家を描いた珍しい時代小説です。主人公は次郎長の一の子分で大政と呼ばれる政五郎。

政五郎は富士山麓悔恨の仕切り役を任されますが、古参の子分相撲常が変死するという事件が起きてしまいます。新しい時代でかたぎとなった侠客に起こる問題を描いています。

東海道一の暴れん坊と称された清水次郎長の生涯を描いた股旅物です。次郎長一家の痛快な活躍を描いた作品で楽しんで読むことができます。史実に忠実なわけではなく架空の人物もいますが、次郎長のエピソードで面白い部分を集めたような作品です。

この作品を原作として、映画やテレビドラマなどで何度も映像化されています。痛快な気分になれる股旅物が欲しいならおすすめです。

数が多い清水次郎長を扱った股旅物ですが、21世紀になって発表された新しい作品です。次郎長の半生を語る内容ですが、幼少期について詳しく描写されているのがこの作品の特徴です。次郎長が商家に生まれて、侠客になる経緯などを読むことができます。

森の石松、大政、小政などおなじみの人物も登場しますが、なかなか語られない幼少期の次郎長の物語が読みたい方におすすめです。

21世紀に出版された股旅物としては新しい作品です。仁義もろくにきれない未熟な主人公音次郎が旅を通して成長していく姿を描きます。自ら望んで渡世人になった音次郎には、アウトローらしい後ろ暗さがなくさわやかなのが特徴です。

頼りない音次郎の姿にハラハラしますが、さまざまな人々に支えられていく成長していく姿が楽しめます。頼りない若者がかっこよく成長していく物語が読みたい方におすすめです。

国定忠治の息子という設定の主人公国定竜次を描いた股旅物です。自分が国定忠治の息子だと知った竜次は、任侠修行の旅に出ます。さまざまな事件に出くわす竜次は、やがて明治維新の動乱に巻き込まれていきます。

最初は痛快な股旅珍道中ですが、侠客の視点から維新の裏側を描いた異色の股旅物になっています。最初が気分よく読めるだけに、最後のほうはつらいかもしれません。悲劇的で泣ける時代小説が読みたい方におすすめです。

股旅物に推理小説の要素を取り入れた時代小説です。主人公の丹次郎は、知り合いの小料理屋一家を切り殺した群雲の伝兵衛を追いかけます。しかし、追い詰めたと思った矢先に伝兵衛は国定忠治に切られて死んでしまいますが、新たな疑惑を生むことになります。

木枯し紋次郎で有名な笹沢佐保が股旅物に新たな風を送り込んだ作品です。一風変わった股旅物が読みたい方におすすめです。

「赤城の山も今宵限りか」などの名文句で知られる国定忠治の生涯を描いた股旅物です。十四の時に馬方に出た話から始まり、飢饉で苦しむらに金を届ける話などが収録されています。浪曲や講談で有名な国定忠治の逸話をまとめて読みたい方におすすめです。

天下を奪うために魔界衆として復活した剣豪たちと柳生十兵衛と壮絶な戦いを繰り広げる伝奇小説です。荒唐無稽で奇想天外ながら非常に楽しんで読めるという、伝奇小説の魅力が詰まった作品になっています。

実在の剣豪同士の夢の対決を描いた原点ともいわれています。映画やアニメ、漫画など様々なメディアで派生作品がありますが、原作とはかなり違った内容になっているのも特徴です。映画などを見た後で読んでも、新鮮な気持ちで楽しむことができます。

実在の陰陽師安倍晴明が不可思議な難事件を解決していく伝奇小説です。死霊や生霊、鬼などが登場しますが物の怪が存在するには理由があり、安倍晴明と親友の源博雅がその謎を解明していきます。

陰陽師ブームを作り出した人気作で、映画・テレビドラマ・漫画・舞台化などもされています。安倍晴明の耽美な魅力は女性にも人気です。

袋物屋・三島屋を訪れた客が心を閉ざした少女おちかに、怖い話や不思議な話を聞かせていくという伝奇小説です。客の語る話は不気味で怖いですが、自然と引き込まれていきます。本当に怖いのは人間の心の奥に潜んだものと感じられるのも、リアルな怖さがあります。

しかし、話を聞いていくほど、おちかの心は少しずつ溶かされていきます。怖い話ですが、次々と読み進めてしまう魅力があります。最後には感動して泣いてしまうというレビューもありました。

徳川三代将軍の座をかけた争う甲賀と伊賀の精鋭各十名の凄惨な戦いを描いた伝奇小説です。秘術の限りを尽くして戦う忍者同士の戦いが残酷ながら、非常に魅力的に描かれています。忍者版ロミオとジュリエットと呼ばれるような恋愛要素もあります。

忍び同士の戦いはどんな手段でも用いる過酷さだけでなく、忍術は非常に独創的で後の作品に大きな影響を与えたと言われています。1958年の作品ですが、21世紀になってもリメイクされているのが人気の高さを証明しています。

直木賞候補にもなった伝奇時代小説です。吉原成立の秘密に関わる神君御免状を巡り、宮本武蔵に育てられた松永誠一郎と裏柳生の戦いが描かれます。不老不死の八百比丘尼や明智光秀説のある天海など伝奇小説らしい登場人物も物語を盛り上げます。

主人公の松永誠一郎にも出生の秘密が隠されています。時代小説に苦手意識がある人にもおすすめです。

江戸時代を舞台にした怪談話が語られますが、各所で起こる事件を解決していく物語にもなっています。悪党を成敗する必殺仕事人のような要素や人情噺の要素もあり、盛沢山の内容です。妖怪の名前がタイトルになった7つの話が収録されています。

かなり分厚いので読むのが大変そうですが、どんどん進んでしまう不思議な読みやすさがあります。怪異について現実的な解説がされますが、それもこの作品の魅力の1つです。

主人公の同心柏木千太郎は、のっぺらぼうというユニークな伝記小説です。ただし、そのことを疑問に思うのは千太郎の娘の小春だけで、顔をがないことを登場人物のほとんどが受け入れています。情に厚く腕も立つ千太郎が人気者というのが意表をついてきます。

江戸の町にのっぺらぼうがいたらどうなるかをリアルに描写して、説得力を与えているのが面白いです。千太郎が挑む事件は妖怪が絡んだ奇怪なものが多く、仙太郎も特殊能力を使います。妖怪捕物帳と呼べる作品ですが、やさしく心温める時代小説になっています。

卑弥呼と諸葛孔明が対決するという奇想天外な伝記小説です。諸葛孔明の奇門遁甲で敗走した曹操は、対抗するため日本の女王卑弥呼を召喚するという内容になっています。トンデモない設定のようですが、歴史的にあり得た要素を積み上げることで説得力を持たせています。

一般的なイメージとはかけ離れた性格の諸葛孔明と卑弥呼の描写も面白いです。あまり描かれることのない弥生時代の日本の描写も楽しめます。

桁外れなスケールで描かれるSF伝奇時代小説です。北町奉行所同心・六波羅蜜たすくは、大坂夏の陣の残党を追っている途中で柳生の刺客に襲われます。討幕を企てる敵を追う途中で、幕府側の柳生に命を狙われ混乱するたすくですが、恐るべき陰謀を知ることに。

次々と暗殺事件が発生し、時空を超える敵とたすくは戦っていきます。現実ではありえない展開ですが、しっかりと史実と絡めてくる展開は見事です。最後にはとんでもない事実が明らかになります。意外性のある伝奇小説が読みたい方におすすめです。

陰陽師で有名な夢枕獏が、伝奇時代小説に初めて挑戦した作品です。主人公の万源九郎は異形の大剣を背負った2メートルの巨漢で、容姿も日本人離れしています。圧倒的な強さを持つ源九郎の敵は、忍者や実在の剣豪、妖術師、果ては宇宙人まで登場します。

源九郎が持つ大帝の剣を含んだ三種の神器の争奪戦も始まり、物語はどんどんスケールアップしていきます。歴史上の人物が登場する荒唐無稽なバトルが読みたい方におすすめです。