直木賞作家の角田光代が描く心を揺さぶる極限の母性を描いたサスペンスストーリーです。衝動的に不倫相手の赤ちゃんを誘拐してしまった野々宮希和子は、さまざまな女性たちにかくまわれながら、東京から名古屋、小豆島へ逃亡生活を繰り広げます。誘拐した子供に「薫」と名前を付け、親子は逃亡生活を送るのです。

第二回中央公論文芸大賞を受賞した本作は、2010年にはテレビドラマ化され2011年には映画化までされました。理性を揺るがすほどの愛と、自身の罪に注がれる光とはなんなのか、悲しくも心揺さぶられるノンストップサスペンスです。

駅伝をテーマにした物語で、主人公の灰二は箱根駅伝を走りたいという思いがありました。そんな灰二は天才ランナー走と出会います。個性あふれるメンバーたちが長距離を走り、夢中で突き進んでいくのです。

毎年箱根駅伝の時期になると、多くの人が応援に行ってテレビでも連日取り上げます。そんな時期になるとついつい本棚から出して読み返してしまいたくなる作品です。本作は2007年に漫画化されたのを機に、ラジオドラマや舞台のほか実写映画化など数多くのメディアで取り上げられました。2018年にはテレビアニメ化まされるほどの人気です。

周囲の人と衝突をしながらも目標に向かって前に進む青春ストーリーは、忘れていた感情を思い出させてくれるでしょう。仲間の大切さや生きることの大変さ、そんなことを考えさせられる感動作です。

実写映画化された作品であり、放送作家として活躍している百田尚樹の作家デビュー作です。なんと文庫本の販売部数が300万部を突破したヒット作で、多くの人から注目を浴びました。

娘に会うまでは死ねないと、そういい続けた男は自ら零戦に乗り命を落としました。妻との約束を守るためと、言い続けたのになぜ自分から零戦に乗り込んだのでしょうか。終戦から60年、主人公の健太郎は死んでしまった祖父の生涯を調べていました。

調べていくうちに明らかになる記憶の断片、そして明らかになる真実に感動と涙が誘われてしまうでしょう。

アニメ化もされた本作はファンタジーな世界観でありながら親子愛や、少女の成長を描いたリアリティのある物語です。児童書でありながら大人もはまる作品で、感動し涙した大人も少なくありません。

闘蛇と呼ばれる獣を世話していた主人公エリンの母は、闘蛇を死なせてしまった罪により死罪となります。処刑の日母の元へと駆け寄るエリンでしたが、母は大罪を犯してエリンを救うのです。

まだ年端もいかないエリンは母を失いながらも獣医師を目指すためさまざまな不幸と困難に立ち向かうのでした。超大作ではありますが、エリンへ感情移入したり物語がどう動くのかハラハラしてしまう感動作です。

表題作のほか短編7作が収録された小説です。比較的読みやすいものが多く表題作以外にもコミカルな作品が含まれています。一冊で充分楽しめる本です。

表題作では、主人公が交通事故から目を覚ますところから始まります。目覚めるといっても主人公は闇の中にいました。五感のすべてを奪われ、残っているのは右手の皮膚の感覚と唯一動かせる指先だけ、それに気づいたピアニストの妻の右腕をピアノに見立てて演奏をしてくれるようになりました。

彼を支えるピアニストの奥さんが、演奏によってどんな生活を繰り広げているのかを想像させてくれる物語です。暖かさだけではなく残されたものの辛さと切なさを感じさせてくれます。最後に主人公は大きな決断をしました。その決断に心動かされること間違いありません。

アニメ化や実写映画化などさまざまなメディアコンテンツで愛されている作品です。涙なしでは語れない青春ストーリーで、タイトルの意味が分かった時涙せずにはいられないでしょう。高校生の主人公が、ひょんなことから一冊の文庫本を拾います。

その本のタイトルは「共病文庫」、クラスメイトの女の子がつづった秘密の日記帳だったのです。彼女は膵臓の病気によって余命僅かでした。彼女が抱えている秘密と主人公の二人が交わりあい、最後にはタイトルの意味が理解できます。

2016年に日本中で大ヒットしたアニメ映画作品の原作小説です。映画を見たことのある人だったら物語自体はわかっていますから、小説版でも読みやすく感じるでしょう。アニメ映画と同様に原作小説もクオリティが高く話題となりました。

夢の中で男女が入れ替わるというSFチックな展開から、物語は思わぬ方向へと進みます。本来出会うはずのない二人がなぜ入れ替わりを果たすのか。真相が明らかになった時、物語は一気に動き出します。

何故二人はすれ違っているのか、何故出会うはずのない2人なのか、この2つがポイントです。新海監督の真骨頂を小説の物語の中で感じられます。

主人公は配達員として働く、猫と二人暮らしの30歳男性、ある日のこと脳腫瘍を患い余命がわずかであることを知るのです。絶望に包まれ帰宅すると、自分と瓜二つの姿をした悪魔と名乗る人物が自分の前に現れました。

悪魔は主人公に「世界から一つ、何かを消すと1日寿命が延びる」と告げてきたのです。自分が生きるために、映画や時計、電話、そして猫を消していく。自分の命と引き換えにさまざまなものが世界から消えていく、猫と陽気な悪魔との七日間を描きました。

佐藤健主演で2016年には映画化もされた注目の作品で、人間関係やさまざまな感情の揺れ動きを表現してします。最後には救いのある心洗われる物語は必見です。

野良猫のナナと、ナナを助けてくれた飼い主サトルの長い長い旅路を描いた感動作品です。福士蒼汰が主演で映画化されたことから一気に話題となりました。作者の有川浩さんと言えば恋愛物語のイメージがありますが、本作は涙なしではいられない、そんな感動作品です。

野良猫ナナの目線で語られる二人の絆と、新しい飼い主を探す長い旅の終着点に心揺れ動くこと間違いありません。長い旅路の中で徐々に明らかにされていく真実と向き合い、最後には声が漏れるほど泣いてしまうでしょう。

2018年の本屋大賞を受賞した本作は、単行本で500ページを超える大作です。学校での居場所を無くしこもりきりの生活をしていた主人公がある日、輝く鏡に誘われ不思議な建物にたどり着くのです。

主人公と同じような境遇7人が集められ、そしてすべてが明らかになるその瞬間、驚きと感動が待ち受けています。読み応えのある作品で、ファンタジーの中にもリアルな表現が話題となりました。ミステリーのような雰囲気と最後に仕掛けられたどんでん返しに目が離せなくなります。

「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」そんなふうにいつも大切なことを教えてくれた明里と、彼女を守ろうとした貴樹。中学生で離ればなれになった2人の恋心と魂はさまよい続けていきます。

新海誠の監督の映画を自身で小説化した名作です。中高生時代の苦い恋の思い出と、再会、成長の物語で、桜の花が舞い落ちる描写が象徴的に描かれます。映画を見たことのある方はもちろん、見たことのない方にもおすすめです。

出版社の営業部員である馬蹄光也は、言葉のセンスをかわれて辞書編集部に引き抜かれますす。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生をささげた老学者。そして光也が出会う運命の女性。新しい辞書の完成に向けて光也と編集部の長い長い旅。不器用な人間の思いが胸を打つ物語です。

「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」の通り辞書を舟になぞらえた美しい物語は、2013年に映画化、2016年にアニメ化もされた小説です。人気作家三浦しをんが女性ファッション誌「CLASSY.」に連載した作品です。

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていました。交通事故で記憶が80分しか持たない元数学者と、新しい家政婦「私」とその息子「ルート」の心のふれあいを美しい数式を介して描いた悲しくも暖かい奇跡のような愛の物語です。

第55回読売文学賞、第1回本屋大賞を受賞した作品。文庫版は発売2か月で100万部を突破した大ベストセラーです。2006年には映画化もされています。美しく収束する数式の様に静かで情熱的な愛の物語です。

京都の美術大学に通う南山高寿は、通学電車で出会った福寿愛美に一目惚れをする。勇気を出して別れ際にまた会えるか聞くと、彼女は突然泣き出して抱きついてきました。「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする」彼女の秘密を知った高寿とすれ違い始める2人の運命。奇跡の運命で結ばれた二人を描く、甘くせつない恋愛小説です。

第3回京都本大賞受賞作で、2015年には漫画版の連載が開始し、2016年には福士蒼汰主演で映画化された小説。小説の累計発行部数は160万部を突破した大ヒット作品です。タイムリープのSFの要素も盛り込んだ、エンターテイメント性の高い作品です。

片道わずか15分のローカル線で起こる小さな奇跡。乗り合わせた乗客たちの人生が少しずつ交差しはじめて、やがて希望の物語に昇華していきます。恋の始まり、別れのきざし。それぞれのドラマを乗せ終点に向けて走っていく電車。ほっこりしながら胸がキュンとする長編傑作小説です。

2008年に単行本が刊行された、有川浩の連作短編小説集です。著者が深い思い入れを抱く阪急今津線を舞台に描かれるストーリー。2011年には岡田惠和脚本、中谷美紀主演で映画化された名作です。20012年には100万部を突破しました。誰もがなじみのある電車を舞台にした身近な恋愛小説です。

代打で呼ばれた合コンでマユに出会った僕。甘美でほろ苦い青春のひと時をみずみずしい筆致で描く青春小説でありながらも、大きな仕掛けにはまる人が続出する作品。イニシエーション・ラブとは通過儀礼の恋愛のこと。この世に絶対などないということを知り別れを経験する成長過程を描きます。

その大きなどんでん返しにより、読み終わったら必ず2度読みしたくなると評判です。2015年には売上130万部を突破し、堤幸彦監督、松田翔太主演で映画化もされました。芸能界にも熱狂的ファンが多い作品です。

婚約者を日本に残してタイで働く東垣内豊と、婚約者とは正反対の魅力を持つ真中沓子。許されない関係に決して「愛している」と言わない2人。必然的に訪れる別れと25年後の再会。せつない男女の熱い想いに心震える名作です。

辻仁成作で、男性向けファッション雑誌「MEN'S EX」1999～2000年に連載された作品です。2008年には中山美穂主演で映画化され、興行収入10億円を突破する大ヒットとなりました。大人にこそ読んで欲しい恋愛小説です。

友人の頼みで、彼女からの二股疑惑を払しょくするためにもう一人の女子の彼氏を演じてくれと頼まれる地味な高校生相原ノボル。自分とは正反対の性格の百瀬にひかれていくノボル。噓の恋が本当の恋になってしまう、青春時代のピュアで甘く切ない物語です。

2014年には早見あかり主演で映画化もされた小説です。過ぎ去ってしまった学生時代の淡い恋心やピュアな気持ちを思い出して、純粋な恋愛模様に涙を流したい方におすすめです。

彼女を守ってやりたい。誰にも渡したくない。高校3年生の春、父の転勤でいとこ兄弟と同居することになった勝利は、久しぶりに会う5歳年上のいとこかれんの美しさに驚きます。しかも、かれんは勝利の高校の新任美術教師。青春時代のピュアで真摯なストレートな恋の行方を描く物語です。

「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズは、恋愛小説の名手、村山由佳によるライトノベルシリーズで、シーズン1で10冊、現在はシーズン2として9冊が刊行されています。コミカライズも大人気の国民的人気恋愛のベルです。シリーズが沢山刊行されているため、長く楽しみたい方におすすめです。

皮膚の薬の匂いを気にして他人と距離をとっている大学生の誠人は、ある日同級生の静流と出会います。匂いに鈍感な静流は誠人にとって静流は心地よく2人の中は深まりますが、誰もが憧れるみゆきに恋してしまいます。奇妙な三角関係のような関係の中で静流は誠人の前から姿を消してしまいます。物語のラストで語られる名セリフは必見です。

大ヒット小説「いま、会いにゆきます」の市川拓司によるもう一つの傑作との呼び声も高い作品です。堤幸彦による映画作品とコラボレーションする形で書かれた物語で、その後再映画もされました。物語の完成度も高く、恋することの切なさや美しさを描いた恋愛小説の傑作として愛されています。

南イタリアの田舎を舞台にした作品です。廃屋に鎖でつながれていた謎の少年と主人公のミケーレの二人が友情と葛藤に揺れ動いていきます。シンプルで読みやすいことからも人気があり、子供時代を思い出させてくれるような作品です。

児童文学ならではのやわらかさを感じながら、その背景には重くも悲しい雰囲気を感じさせてくれるでしょう。子どもながらの純粋さを心から感じられます。大人になったからこそ一度は読んでいただきたいそんな小説です。

「その女アレックス」で話題となったヴェルーヴェン警部シリーズのデビュー作です。奇怪な連続殺人事件が巡っていく物語の真相に迫ります。最後にどんでん返しが待っているヴェルーヴェン警部の始まりとなる物語で、読み進めるうちに物語に没頭してしまいます。

残虐な殺人を繰り返す犯人を追う警部たち、次第に犯人の思惑にのめり込んでいってしまうのですが、それと同時に犯人の世界観に私たち読者までもが巻き込まれていく、そんな作品です。

最後に待ち受けている結末により、この物語のタイトルの意味が理解できるでしょう。最後までハラハラドキドキ、感情が揺れ動くこと間違いありません。予想とは反する結末が待っています。

屋根付きの橋を撮影するために片田舎を訪れた写真家ロバート。孤独に苦しむ農家の主婦フランチェスカとの4日間だけの恋は、とてもシンプルで純粋な心の交流でした。時間と場所を超えて通じ合う2人の物語です。

全世界で5千万部もの世紀の大ベストセラーとなった本作は、1955年にクリント・イーストウッド監督・主演で映画化もされています。また、この4日間の後を描いた「マディソン郡の橋　終楽章」も刊行されています。

恋愛小説のように見せておきながら雰囲気をがらりと変えていく物語は必見です。ドイツの戦後を描いた小説で、ドイツでは教科書にも記載されています。戦争や法律といった難しいテーマを取り扱っていますが、決して読むのに難しさは感じません。

世界中がその物語に熱中し、涙したとさえ言われています。「愛を読むひと」という題名で映画化もされました。過去に犯した罪はどの様に裁かれ、そして受け入れるのか誰もがその物語に深く考えさせられます。

ドイツで注目されてからというもの、5年間で25か国語に翻訳されました。アメリカでは200万部を超えるベストセラーとなり、愛されている作品です。

映画作品などが作られる前から、口コミで人気を集め話題となった名作です。少し奇妙な学校で育った主人公たちの生涯を描いた作品で、高い文学性の中にエンターテインメントとしての要素が含まれています。

最初から最後まで、どこか悲しく切ない物語が進んでいき夢中になって読み進めてしまうでしょう。英米ではベストセラーとなり、さまざまな賞にノミネート、さらに受賞してきました。

謎めいた展開と切なさは必見です。2010年には映画化され、日本では2016年にテレビドラマ化された作品です。2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオイシグロの傑作です。